第1回千代田図書館ワークショップ
レポート
2008.01.22
カルチャー|CULTURE

第1回千代田図書館ワークショップ

「永江朗氏による初心者向けライティング講座」

熱心に聴講し、メモを取る参加者たち。
20〜30代の千代田区在勤者が中心で、
なかには出版関係者も。
イベントを広く知ってもらうため、個室でなく
オープンスペースで開催。図書館でマイクを
使って話すというのも新しい試みだそう。
館内に永江氏の著書を展示。
以前、弊誌でも紹介した千代田区立千代田図書館は、「千代田ゲートウェイ」というテーマのもとに、区の情報資源の窓口として様々な新しい試みを行っている、新しいタイプの公共図書館である。(※過去の記事はこちら)。そんな同館で、2007年11月20日、ワークショップ「初心者向けライティング講座」が開催された。これは、同館広報部が図書館の利用促進のために企画・主宰したものである。

第1回となる今回は、幅広い層に立ち寄ってもらえるように、テーマを「初心者向けライティング講座」とした。会場は図書館内の特設イベントスペースで、定員50名で参加費は無料。主な告知は、図書館webサイトと館内のポスター、千代田区合同庁舎内の液晶掲示板のみだったにもかかわらず、わずか一週間で満席になったという。

講師は、人気フリーライターの永江朗氏。『不良のための読書術』『消える本、残る本』『ブックショップはワンダーランド』など、本に関する著書も多数あり、書店ルポルタージュの第一人者としても知られている。

「広報活動の一環として、オープン当初からワークショップの開催を計画していました。気軽に立ち寄れて堅苦しすぎず、ビジネスにも役立つテーマを考えた結果、第1回は「初心者向けライティング講座」に決定。本や雑誌に造詣が深く、語り口調も穏やかなことから永江さんに講師をお願いしました」(広報・坂巻さん)。

活躍中の人気ライターからライティングのポイントをレクチャーしてもらえるということで、当日は20代後半〜60代の幅広い年齢層で賑わった。来場者の男女比は約3:7と女性が多く、20〜30代が中心。これは図書館のイベントとしては異例の若さなのだそうだ。出版社や書店が集積する土地柄か、出版関係者も多く見られた。

講座は、「書きたいことよりも書けることを書く」「文章の設計図を作る」「何度も読み、たくさん書く」など、要点に体験談や実践的なアドバイスが盛り込まれた内容。約60分間、テンポよくコンパクトにまとめられていた。講座中は、参加者それぞれが熱心にメモを取り、終始真面目な雰囲気。個室でなくオープンスペースで行っているため、参加者以外に、遠巻きに耳を傾けている図書館利用者も少なくなかった。最後の質疑応答では「インタビューで本質を引き出すコツは?」、「〆切りと内容の折り合いをどうつけているのか?」など鋭い質問が飛び交った。

さらに講座の聴講だけでなく、成果を発表する場を設けているのが今回のワークショップの特徴である。終了後、参加者を対象に「私の人生をかえた一言」「モノにまつわること」「最近読んだもの」という3つのテーマで小作品を募集。応募作品は永江氏がすべて読み、優れた作品を「永江朗賞」として数点選出。選ばれた作品を図書館内に掲示するともに、応募された全ての作品を図書館で配布する。

「アンケートによると、講演者と内容に魅力を感じてお越しくださった方が大半でした、みなさんのニーズにあった企画が行えたと感じています。今後も立地の特性を活かし、図書館だからこそできるイベントを行っていきたいと思います」(広報・坂巻さん)。

ブログやSNS、メールの普及により、“見られる”文章への意識が高まるなか、ライティング能力はライターやコピーライターなど専門職種以外にも必要とされるスキルになりつつある。今回のワークショップの参加者の熱心さは、こうしたライティングに対する関心の高まりを裏付けるものであるといえよう。これまでは本を借りて情報をインプットする場だった図書館だが、今後は情報のアウトプットを支援していく場としても機能していくのではないだろうか。

さらに同館では、今後も年に2〜3ほどこうしたイベントを行っていく予定だそうだ。

[取材・文/伊藤洋志(フリーライター)+『WEBアクロス』編集部]


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