Q-pot.

Q-pot.

レポート
2004.08.16
ファッション|FASHION

「Q-pot products」の代表的なモチーフ、
“TEETH(歯)”。作品はモチーフごとに
ディスプレイされている。パッケージも
モチーフ別。
イスの形をした什器や照明は、すべてワカ
マツさんの手作り。来店客から譲って欲し
いという声も少なくないそうだ。
フラワーモチーフの作品は床に並べられて
いるため、必然的にしゃがんで見ることに。
04年の新作の1つ「コーヒー豆」
(47,500円)。取材中に来店した
『anan』読者が即買いして行った
一品。
明治通りから幅2mほどの路地を抜けると、原宿とは思えないほど静かな住宅街に出る。5月9日、その一角にひっそりとオープンしたのが、アクセサリーショップ兼ギャラリー『Q-pot.(キューポット)』だ。

「今年2月に初めて合同展示会『ROOMS』に出展しました。その後、私たちの世界観を表現する場所を探し求めていたときに出会ったのがこの物件でした。ひと目見た瞬間“これは私たちのために建てられたものだ!”って思ったくらい。即決しました」というのは同店のプレス若菜蓮さん。

外観は真白で縦長の箱のようにシンプルだが、無機質な白壁にところどころ被われた木材がやんわりとしたぬくもりを感じさせる不思議な佇まいである。

「このぬくもりに惹かれました。シルバーアクセサリーというとカッコイイとかクールなイメージが強いんですが、日常的なモチーフを用いることで、シルバーにもぬくもりを持たせたいというのがデザイナー、ワカマツタダアキの想いなんです」(若菜さん)。

たしかに、同店の主力ブランド「Q-pot products」がモチーフにしているのは、歯やリンゴ、バナナ、チーズ、卵、コーヒー豆、ホイップクリームなど日常的でユニークなものばかりだ。

実はワカマツさんの経歴もユニークで、17歳で『MEN'S NON-NO』の専属モデルとしてデビュー。某有名ブランドのショーにも出演したことがあるという。その後、皮革職人の父親が原宿に開いたクラフトアクセサリーショップで仕事を手伝ったことがきっかけで、ものづくりの世界に飛び込んだのだそうだ。

「もともとアクセサリーが好きだったこともありますが、自分を表現するもの、自己発信する手段として最終的に行き着いたのがシルバーという素材だったんです」(若菜さん)。

「Q-pot products」は、現在GARNIやBEAMS (JAPAN、YOKOHAMA、KASHIWA、WEST)などで取扱っている。運営元の(株)GRAMMEは、アクセサリーの製造・卸を20年以上にわたり手がけてきた会社で、それまでは某有名ブランドへのOEM提供がメインだったが、代表取締役の勢馬一正氏とデザイナーのワカマツさんは遠い親戚関係にあったことから、01年にオリジナルブランド「Q-pot products」をスタート。今年、初めての直営店を開くことになったのだという。ちなみに、プレスの若菜さんはワカマツさんの奥様。店長の戸浪隆博さんは義理の弟さんだとか。

「テーマはコミュニケーション。たとえば、歯のかたちをしたネックレスをしていたら“何これ!?”と会話が始まるじゃないですか。ショップのディスプレイも同じです。床に直接作品を並べることで、お客さんはギャラリーで作品を見るようにじっくりとしゃがんで作品に近づいてくれる。そこから私たちとの会話が始まるんです」(若菜さん)。

また、02年からはストリート系のブランド「SHARP EIGHT」も立ち上げている。

ここ数年、ジュエリーデザイナーになりたい、自分でアクセサリーのデザインをしてみたい、という人がずいぶんと増えている。ジュエリー専門のデザイナーが次々とデビューし、オンリーショップを立ち上げているほか、プロダクトやインテリアのデザイナー、建築家といった他の分野で活躍するクリエーターたちがデザインするアクセサリーブランドも少なくない。

オーセンティック系のブランドのものではなく、ドメスティック系のものでもない、クリエーターがつくる個性的なジュエリーやアクセサリーのマーケットは、今後ますます拡大するだろう。

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