246COMMON Food Carts Farmer’s Market
(246コモンフードカーツ・ファーマーズマーケット)
レポート
2012.10.01
フード|FOOD

246COMMON Food Carts Farmer’s Market
(246コモンフードカーツ・ファーマーズマーケット)

商店街をコンセプトにした屋外型商業施設が南青山に登場

246通りに面したエリアには、テイクアウトで利用しやすい店舗が並ぶ。中洞牧場では自然放牧で育ったミルクを使ったソフトクリームを販売。
カフェ・カンパニー直営のWIRED CAFE<>FIT(ワイアードカフェフィット)もキッチンカーで営業。
池尻大橋に本店を構える京風たこ焼きの池坊。
那須・黒磯で人気のSHOZO CAFE(ショウゾウカフェ)も出店。ドリップコーヒーと焼き菓子を販売している。
 東京港区の表参道交差点から国道246を外苑前方面へ歩くこと2分。ビルとビルの間にソフトクリームショップの看板や瑞々しい野菜が目に入ってくる。これは、2012年8月3日にオープンしたコミュニティ型商業施設246COMMON Food Carts(246コモンフードカート)Farmer’s Market(ファーマーズマーケット)(以下、246COMMON)。約250坪の敷地にモバイル型ショップの約20店舗が並んでおり、食事や買い物を楽しむことができる。事業主体はWIRED CAFE(ワイアードカフェ)などを展開するカフェ・カンパニー(株)
 
 きっかけは、2010年3月に営業を終了した商業施設LaPlace(ラ・プラース)南青山の跡地が遊休地となっており、土地を所有するUR都市機構が事業者を公募し、カフェ・カンパニー(株)が提案した、2014年3月までの期間限定での遊休地活用プロジェクトである。
 
 「都心部では、商業施設の撤退などによって遊休地が増えつつありますが、様々な理由で次の展開が難しかったり、駐車場等にするケースが多くなっています。一方で、全国各地で商店街がどんどんシャッター街になってしまっている現実もあります。それなら、ここで商店街のようにいろいろな人が交われる空間をつくれないか、青空のもとで環境を活かした新しい商業空間をつくれないか、とういう発想からうまれたのが246COMMONです。すべてモバイル型店舗なので期間終了後も再利用が可能。都心でのこのような出店形式はマッチしていると思います」(カフェ・カンパニー PR担当/伊原志津子さん)。
 
 施設運営は、国連大学前広場で毎週開催されているファーマーズマーケットを運営するメディアサーフコミュニケーションズ、空間演出は元IDEEの黒崎輝夫さん率いる流石創造集団(株)が手がける。
 
 入口には通りすがりの人でも立ち寄りやすい、ソフトクリームショップや八百屋を配置。敷地を奥に進むと、異なるデザインのコンテナやモバイル型のショップが敷地の輪郭を縁取るように軒を連ねる。中央にテーブル席が用意されており、好きな食べ物を買って、好きな席で食事を楽しむことができる。9月からは古民家のような佇まいが並ぶ和の趣の横丁エリアもオープンした。
 
 出店店舗は20店舗(2012年9月現在)。業態は3つで、ファーマーズマーケットにも出店している農家やベーカリー、飲食店系、雑貨系。空間全体のテーマは「たまり場」。主な店舗は、天然酵母パンの卸を行っており今回が初の常設店となるpain au sourire(パンオスリール)、カフェ・カンパニー社運営のカフェWIRED CAFE<>FIT(ワイアードカフェフィット)、群馬県甘楽町で採れた野菜を使った水餃子を提供する太陽と雨、ネパール産ヒマラヤ岩塩の専門店ローズベイジャパンなど。
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小民家風の小さな店舗が並ぶ横丁エリア。獣肉酒家 米とサーカスやキセル専門店IKI-YA、書斎をテーマにした老眼鏡(リーディンググラス)専門店 JUJUBEE Matureなどが出店。


pain au sourire(パンオスリール)は、初の常設店をオープン。山小屋風の外観が印象的。
世界自然遺産・白神山地の腐葉土から発見された「白神こだま酵母」など、酵母をパンの特性に合わせて使い分けている。
マクロビオティックをベースに、野菜を中心としたメニューを扱うblue kitchen(ブルーキッチン)。横浜・上大岡のベジカフェdritte(ドリッテ)の2号店。
日本各地の有機野菜と果物を販売する「麦の会」。オケで冷やした野菜や果物をその場で食べる事ができる。
ビルの谷間に現れたファッショナブルな屋外フードコートといった雰囲気だ。
ネパール産ヒマラヤ岩塩の専門店ローズベイジャパン。抗酸化力や保温効果があり、バスソルトや食塩として人気。
和カフェ茶茶の間の黒ごま抹茶パフェ。1キロ2万円の抹茶を使い、抹茶本来の風味と苦味が味わえる。
 また、出店契約を原則3ヶ月タームにしており、独立を考える若い人にテストマーケティング的に活用してもらおうと考えている点も興味深い。店舗を構えるには初期投資のリスクも大きいが、ここでは少ない投資で試験的にモバイルショップを構えることが可能。実際にomotesando sakaba(オモテサンドウサカバ)を運営する男性3名は、飲食店開業を目指して福岡から上京。246 COMMONでテスト出店している。

 「想像以上にお客様が来て下さって驚いています。たとえばビルの一室に出店していたら来客数がゼロの日もあり得ますが、ここなら他店を目的に来たお客様も買いに来てくれます。おいしいと思ってもらえれば、数十分後にまた買いに来てくれたり、常連になってくれたりもします」(omotesando sakaba森枝さん)

 来客層は、平日は近隣のアパレルショップ店員や近隣企業で働く人、小さな子ども連れの若いママが多く、土日はメディア情報をもとに遠方から訪れる目的客が大半を占めるという。近隣住民と働く人がテーブルを共にし「それはどこのパン?」というような会話が自然に生まれている様子は、おしゃれな野外フードコートといった雰囲気だ。

 「ここは屋台村ではなく、商店街のマインドを持った新しい商業空間。空間の持つ力で、普段は交わらない方たちが出会い交流する場所になっています。旬の野菜を使った料理を出すomotesando sakaba(オモテサンドウサカバ)のスタッフが、敷地内にある有機野菜の八百屋 麦の会の食材を使うなど、店舗間の横のつながりもできています。また、おかげ様でリピート様も増えていますが、いくら場所が魅力的でも、コンテンツに魅力が無いとお客様は離れるもの。出店者の皆さんが良いものを提供しようと、切磋琢磨している証拠です」(伊原さん)。

 同プロジェクトは、高額なハードウェア(=建物)投資をするのではなく、ソフト・コンテンツやアイデアで勝負する、商業施設の新しい事例といえるだろう。カートやコンテナで構成されているため、スペースさえあれば場所を変えて再現可能というサステナブルさも時代にマッチしている。

 また、昨今のエコ・ライフスタイル志向による自然回帰が追い風となり、アウトドアが消費者に身近になっていることは確か。東京都江東区のバーベキュー・キャンプ場「WILDMAGIC(ワイルドマジック)」、東京都調布市の「BBQ-VILLAGE(バーベキュービレッジ)」など都市部の遊休地を活用したアウトドア施設が相次いで登場している。

 246COMMONは、「ソフト・コンテンツ重視型」であり、さらに「アウトドア」「コミュニティ」「サステナブル」など昨今のトレンドの要素を盛り込んだ、商業施設の最新の形といえそうだ。

取材・文 緒方麻希子(フリーライター)+ACROSS編集部

246COMMON(246コモン)

〒107-0062
東京都港区南青山3-13
TEL:03-5459-3362

営業時間:11:00〜22:00
無休 
(店舗によって営業時間・定休日が異なる)


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