サブスクリプション(定期購入)型Eコマース
2012.09.14
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サブスクリプション(定期購入)型Eコマース

EC事業の最新トレンド!今年が元年といわれるサブスクリプション(定期購入)型ECとは?
〜差別化は人のぬくもり感ある「コミュニケーション型」付加価値〜

会員登録の際のプロファイルに沿って好みにあった“プレミアムコスメサンプル”が毎月届く『GLOSSYBOX(グロッシーボックス)』は、ドイツ発。参入相次ぐサブスクリプション型ECのなかでも成功を収めている事例だ。
『GLOSSYBOX』は月1,500円(税抜/送料込)という価格設定もうれしい。ミニチュアコスメが主体ではあるが、ブランドによっては商品の現品が入っていることも!
『GLOSSYBOX』では届けられたコスメの詳細や、スタッフのコメントが掲載されたカードが添付されている。
半年毎に非常食を届けてくれる『yamory(ヤモリ)』。震災以降ニーズが高まった非常食だが、買い忘れや賞味期限切れを防げ、定期的に届くことで非常時への意識も喚起してくれるサービスだ。
選りすぐりの日本酒が届く『SAKELIFE(サケライフ)』は、『CAMPFIRE』で資金を調達したことでも話題になった。メルマガで日本酒の知識や楽しみ方も教えてくれる。
 今年、EC事業において「サブスクリプション型EC」=「定期購入型EC」への新規参入が相次いでおり、話題になっている。ミクシィは、9月中旬にサブスクリプション型のファッションEC「Petite jeté(プティジュテ)」をスタート予定だ。しかし、ビジネスモデルとしては通販業界では従来から頒布会や定期購入などの「購入者に定期的に商品を届ける」という仕組み自体は存在している。それでは、サブスクリプション型ECはそれらと何が違うのだろうか?

 昨年から今年にかけての、日本におけるサブスクリプション型ECへの参入状況をまとめてみると(※一覧表参照。ダウンロードはこちらから)、食品、酒類、コスメ、ファッション、雑貨、CDなど商材や提供内容など様々。確かにスタート時期は2012年が大半を占めており、2012年が「サブスクリプション型EC元年」と呼ばれるのも頷ける。

 昨年12月に参入し、既に登録会員数が3万1,000人を超えているハイエンドなコスメのサンプリングサービス「GLOSSYBOX(グロッシーボックス)」運営:ビューティー・トレンド・ジャパン株式会社)のPRを担当するブランドニュース株式会社に話を聞いた。


 
 
Q.---サービス概要と特徴について教えてください。
A.2011年2月にドイツで誕生したサービスで、現在は世界18カ国(欧米ではドイツ、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、アメリカ、アジアは日本の他に中国、台湾、韓国)で展開中です。会員数は全世界で約20万人、日本は500ボックスからスタートしましたが、現在の会員数は3万1,000人を超えました。会員登録(無料)してマイアカウントを取得後、『継続プラン』に加入していただいたお客様に、厳選された毎月4〜5ブランドのコスメのミニチュアサイズや現品が入ったボックスをお届けしています。価格は1500円(送料込)。お客様にはビューティプロファイルとして、ご自身の肌質やスキンケアやヘアケアの悩み、好きな香りのタイプ、メイクの嗜好などについて登録いただくので、このプロファイルに基づいて、社内の美容の専門家がセレクトしたそれぞれのお客様に合ったボックスをお届けする仕組みです

 「サンプリング」と聞くと、「企業から広告料としてお金をもらってユーザーには無料で配布する」と思いがちだが、 GLOSSYBOX  のビジネスモデルは企業からは広告費などは一切取らずに無料でサンプルを提供してもらい、会員が毎月1500円で4〜5ブランドのサンプルセットを購入しているというのが特徴だ。 GLOSSYBOX   が掲げる「ハイエンドなコスメ」のイメージに合わないブランドは、場合によってはお断りしているという。サンプル提供企業には、ユーザーからの使用後の感想や要望などのアンケート結果がフィードバックされる。

 取扱実績のあるブランドとしては、クラランス、ジュリーク、モルトンブラウン、シュウウエムラ、ニュクス、ヴェレダ、SHIGETA、TAKAMIなど、お馴染みの百貨店系、人気のオーガニック系、ドクターズコスメ系など国内外100ブランドを超える。送られるサンプルも1回分のお試し程度の少量ではなく、1週間以上は使い続けられる程度の量で、時には現品が入ることもあり、ユーザーにとっては毎月何が届くかわからないワクワク感、美容の専門家による自分のプロファイルにあったセレクトという安心感、そして複数のブランドのコスメがしっかりした量で手に入るという「1500円の元は充分取れる」と思えるお得感とでコスメ好きの間では既に話題になっているという。

 
Q.---お客様の反響はいかがですか?
A.「私たちが想定している以上のペースで会員数が増えて行ったので途中で供給が追いつかなくなり、一時お客様にはお待たせすることになってしまいましたが、9月からはようやく体制が整いました。会員数が急増した原因は、『私にはこんなものが入っていた!』『この内容で1500円はお得』『フランスのグロッシーボックスにはこんなブランドが入ってるらしい!』などfacebookやツイッター、時には中身を開ける動画がYouTubeにアップされていたりと、SNSを中心とした口コミなどでバズを生み、広がっていったこと。全てが満足という内容だけでなく、もちろんご不満の声などもあります。1500円という価格設定なので、お客様にとっては、ちょっといいランチを食べるぐらいの価格で、試したことのないコスメが試せて、ラグジュアリーなボックスに入って送られてくると、自分へのちょっとしたご褒美的な感覚も楽しんでいただいているのではないかと思っています」

 また業界紙『WWD Beauty』とのコラボボックスやNatural & Organic などテーマ性のあるボックスも話題になったという。フランスではフィガロ誌とのコラボボックスやメンズボックスなどもあるそうだ。日本のGLOSSYBOX のfacebookの公式ページでは、商品情報、グローバル情報、ビューティtipsなどが高頻度で発信されている。今後は会員参加型のイベントなどより楽しめるコミュニティとしてオフラインも絡めたコンテンツなども提供していく予定だ。最後にターゲット層について興味深い話を聞いた。

 「実際の会員のボリュームゾーンは首都圏の働く女性が中心です。コスメ情報もたくさんあり、彼女たちはいつでも気軽に百貨店などにサンプルをもらいに行くことも可能な環境にはありますが、皆さんお忙しくて自分でサンプルをもらいに行く時間がなかったり、情報がありすぎて『選びきれない』という状況もあるようで、『自分の肌や好みに合ったコスメが試せるのがうれしい』というお声をいただいています」

 
 情報過多の時代に、「選びきれない」「選ぶだけで疲れる」といったユーザーにサブスクリプション型ECがマッチするようだ。
 
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日本初のモール型サブスクリプション型ECとして注目される『HATCH』。8月からは1回のみのお試し購入コースもスタートした。
『HATCH』を運営する、株式会社lap&co. (ラップアンドコー)代表、三浦有人さん。国税局⇒スタートトゥデイ(ZOZOTOWN運営)⇒クラウンジュエル取締役就任後、同社を立ち上げたという異色の経歴の持ち主だ。
『HATCH』『東京スパイス番長、野口慎一郎が選ぶスパイス』は、31,500円(5,250円/1回)(税込)12ヶ月コース(計6回発送)。毎回スパイス数種類とスパイスケース、オプションとして特別レシピ他、真鍮製スパイスクラッシャーなどの器具が届く。
『HATCH』『BIGLOVE仲真史が発掘する、インディー・ロック・ニューウェーブの洋楽CD』は、90年代の渋谷系ブームを牽引したインディーズレーベル「ESCALATOR RECORDS」(エスカレーターレコーズ)の代表であった、仲真史さんがセレクトしたCDが届く。6ヵ月コース31,500円(5,250円/1ヶ月)(税込)。
スタイリストが買い物に同行してスタイリング提案をしてくれるサービスも!『スタイリスト武田泰輔の「スタイリング」』は、210,000円(52,500円/1回)(税込)。
『BoxToYou(ボックストゥーユー)』は世界初の定期販売プラットフォーム。Grow!Incが今年7月に立ち上げ、Facebookアカウントを利用して誰でも簡単に定期販売をはじめることができるという新しい切り口で、今後の動向が注目される。
今秋スタート予定の『stylepick(スタイルピック)』。毎月好みに合った靴をおススメしてくれ、それを購入すると支払が発生する仕組み。商品はスタイリストや読モがセレクトしてくれるというのがポイント。運営はPlayMined株式会社。
もう1つ、2012年7月に新規参入したばかりの「HATCH(ハッチ)」を運営する株式会社lap&co.代表取締役の三浦有人さん(30歳)にも話を聞いた。「HATCH」は、国内初のモール型定期購入ECで、取扱の商材がコーヒー豆、スパイス、ドライフルーツ、CD、ヘアケア、パーソナルスタイリングとライフスタイル全般に及んでいるのが特徴だ。代表の三浦さんは、大学卒業後国税局キャリア、スタートトゥデイ(ZOZOTOWN運営)アルバイト→経営企画室マネージャー、クラウンジュエル取締役を経て独立と、異色の経歴を持つ。

Q.---国税局からファッション系EC、そして今度はサブスクリプション型ECに至った経緯を教えてください。
A.「僕の大学時代は就職に関して『公務員ブーム』みたいなものがあり、僕も国家公務員上級試験を受け、財務省(国税局)に入りました。でも、どこかにこのままフツーのおじさんになりたくないなという気持ちがあって。結局8ヶ月で辞め、もともと『ZOZOTOWN』のユーザーで服が大好きだったので、スタートトゥデイにアルバイトで入社したんです。ちょうどその頃は上場前の会社がこれから大きくなっていく時期で、すごく面白かった。社長やCFOからもすごく刺激を受けました。業務では、社内コンサル、事業戦略、M&Aなども経験し、会社が急成長していくのを目のあたりにする機会に恵まれました。昨年8月に独立してlap&co.を立ち上げ、今は自分が培ったファッションECのノウハウで、アパレルを中心にECコンサルティングを行なっていますが、1年ぐらい前からサブスクリプション型ECに興味を持っていて、今年、準備期間3ヶ月!で参入することになりました」

Q.---ファッションECの最前線にいて、なぜサブスクリプション型ECに?
A.「理由は4つあります。1つは日本以外の海外(特にアメリカ)でトレンドになっており、日本でも“来る”と思ったこと。大手がやる前にできるだけ早く参入しておきたかった。2つ目は、人は選択するのが苦手なこと。『24種類と6種類のジャムの選択肢をユーザーに与えると、試食率は24種類のほうが高いものの、実際の購入率は6種類のほうが高い(6種類は30%、24種類は3%の購入率)』という有名な調査結果がありますが、情報過多の時代にこそ「選んであげる」サービスはイケるのではないかと。3つ目は商品力・プライシングに加え、付加価値を提供できるサービスは面白いのではないかと思ったこと HATCH では、付加価値を『その商品と暮らす何か』と位置付けライフスタイルまで届けたいと考えていますが、例えばコーヒー豆であれば、器具などの有形の付加価値と、豆の選び方や豆についての知識や蘊蓄など無形の付加価値と2種類あると思っています。4つ目は、顧客と長期的良好な関係が築けること。きまった日にまとめて発送ができたり、商品撮影をその都度しなくて良いなど、フルフィルメント(管理・運営)コストがかからないその浮いたお金や時間を、顧客とのコミュニケーションやサポートにかけることができ、顧客と密な関係を築くことができるんです」

Q.---3ヶ月の準備期間って短くないですか?
A.「事業サイドからすると、サブスクリプション型ECは、入荷・出荷情報などの提供や問い合わせの手間はいらない、数字が予め読める、提供者も余分な在庫を持たなくて済む、など参入障壁は実は低いんです。だからこそ、その分、付加価値勝負だなと思います」

Q.--- 「HATCH」 の商品ラインナップ・提供する付加価値とは?
A.HATCHには『セレクター』と呼ぶ、その道の専門家が揃っています。例えば、スパイスのセレクターは野口 慎一郎さんで、東京スパイス番長、東京カリ〜番長としてもよく知られている方です。CDのセレクターは仲真史氏。渋谷系レーベルとして一時代を築いたESCALATOR RECORDSの代表を経て、現在は原宿のレコードショップおよびインディペンデントレーベル『BIG LOVE』を主宰されています。他にはコーヒー豆、スタイリストによるパーソナルスタイリング、ドライフルーツ、ヘアケア、魚沼の米など。付加価値は、それぞれ本を出してもおかしくないぐらいの専門家による厳選されたセレクション、そして解説や商品説明です

Q.---現在はセレクターが選んだ商品やサービスを「面白い」と思った方が購入する仕組みですが、今後はより双方向的なサービスを考えていますか?
A.最初に設定している6ヵ月程度の定期購入期間が終わったら、次はセレクターがお客様のご要望に応じて改めてプランを提案する仕組みになっています。例えば同じようなコーヒー豆が欲しい方、いろんなものを試してみたい方など様々だと思うので、商品やサービスに関する感想やご要望などを聞きながら、そのお客様向けに何をお届するかをカスタマイズしていくのがいいかなと。今後はお客様とセレクターがリアルな場で交流できるような機会も作っていきたい。そうすることでお客様へのセレクションの精度も上がると思いますし、お客様も楽しいと思うんです」

Q.---ターゲットはどのような方を設定していますか?
A.35歳以上の本物志向・高級志向かつエッジ感のあるものが好きな高感度な生活者です

Q.---今後、商材やセレクターなどは増やしていく予定ですか?
A.「はい。インテリア雑貨、ラジコン、ランドリーグッズ、スニーカー、プラント、スイーツ、本など各業界のセレクター候補と交渉中で、年内に15〜20ぐらいのコンテンツにしたいと思っています。セレクターのイメージは『情熱大陸』に出てくるような、この分野だけは譲れない、みたいな熱い人。そんな人たちが選んだモノならぜひ買いたい!と思えるようなモノやコトをどんどん提供していきたいです。今後は、キュレート集団『HATCH』としてパッケージ化し、企業様向けにご提案するBtoBのビジネスモデルも視野に入れています

 サブスクリプション型EC最前線にいる両社にお話を聞いてみて、改めて従来の定期購入とは何が違うのかが明らかになった。従来の定期購入が一方的に商品を発送するサービスだとすると、サブスクリプション型ECと言われる新トレンドは、お客様の好みや嗜好に合わせて商品をセレクトするタイプと、こだわりのセレクターによる商品やサービスにお客様が興味を持ったり共感して購入するタイプがあるが、どちらにも共通しているのは「人のぬくもり」感。メルマガやサイトで商品やサービスに関しての詳しい説明やストーリーなどを披露したり、会員限定の参加型イベントを行なったり、facebookやTwitterなどSNSを介して事業者とお客様、お客様同士などが自由に交流したり、と「コミュニケーション型」とも言えるビジネス形態が特徴だ

情報過多で「何か買いたいけど選びきれない」生活者が増えていくほど、このサブスクリプション型ECの受容性は高まって行くと思われる

また、若い消費者を中心に、“百貨店離れ”が叫ばれるなか、「グロッシーボックス」では、ボックスに入っていた某百貨店ブランドのサンプルを使用した人のうち、9.6%が実際に店頭を訪れ、4.4%が商品を購入した、というデータもあるという。こうしたサプライヤー側のニーズにも対応したビジネスモデルといえるが、ECが拡大を続け、「ネットで買えないものはない」時代になり、価格競争以外に差別化要因が見出しにくくなっている今、サブスクリプション型ECがEC事業の新たなトレンドの1つとして大きなマイルストーンとなっていくのか注目したい

【取材・文:会田裕美(マーケティングプロデューサー)】
 


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