按田餃子(あんだぎょうざ)
レポート
2012.09.19
フード|FOOD

按田餃子(あんだぎょうざ)

料理研究家、カメラマンらが手がける異色の水餃子店

水餃子/450円。自家製の皮は殻ごと粉末にした有機ハトムギ配合。具は国産の鶏と豚をベースに季節ごとの素材を組み合わせている。
テーブルには、醤油、酢、餃子のたれの横に、味の要という万能スパイスが。これはコリアンダー、クミンシードなど、さまざまなスパイスをオリジナルブレンドしたもの。
オープンのきっかけとなった『冷蔵庫要らずのレシピ』(按田優子著/ワニブックス刊、1260円)。
自家製コーラ/600円、ドライなスイカジュース(夏季限定)/500円など個性的なドリンクも。
 個性的な飲食店が集積する東京・代々木上原の駅から徒歩2分ほどの場所に「按田餃子(あんだぎょうざ)」がオープンした。店名から分かる通りメニューは餃子、しかも水餃子だけに絞った珍しい業態である。運営は(株)包田包。オーナーは料理研究家の按田優子さん、カメラマンの鈴木陽介さんで、立ち上げにはフードスタイリストの城素穂さんも関わっており、有志メンバーの竹野和泉さんがマネージャーとして運営を行う。
 
 2011年9月に書籍『冷蔵庫いらずのレシピ』出版を記念して、代々木上原の「hakoギャラリー」でイベントを行った際に、撮影を務めた鈴木さんの提案で、掲載メニューである水餃子を振る舞ったところ、大好評。
「また食べたいという声が多くて、調子に乗ったと言いますか(笑)。それなら書籍の製作に関わったメンバーでお店をやってみようかと、半ば勢いでスタートしました」(鈴木さん)
 
 2012年2月に物件を契約し、約3ヵ月の準備期間を経て2012年4月にオープンした。鈴木さんはもともと代々木上原に事務所を構えており、按田さんも代々木上原の乾物を使ったデリでマネージャーとして勤務していた経歴の持ち主。出店先に馴染みのある代々木上原を選んだのは、ごく自然な流れだったという。しかし、代々木上原を選んだ背景には、もう1つ大きな理由がある。
 
 「上原にはファストフードチェーン店はたくさんあるものの、夜遅くまで開いていて、女性が一人で気軽にきちんと食事できる飲食店が少ないんです。私自身、そういうお店があったらいいなと常々思っていましたし、駅にあるスーパーでお惣菜を買う女性の姿をよく見かけていたので、ニーズはあると感じていました」(鈴木さん)
 
 そこで、「女性にやさしい餃子を」というコンセプトのもと、夜遅い時間に食べても胃にもたれず、カロリーが控えめのヘルシーな水餃子にメニューを絞った。具材にニラやニンニクは不使用、焼き餃子のように衣服や髪ににおいが付かないように、水餃子にしたそうだ。
 
 席数はカウンター6席、4名がけ掛けのテーブル1席、計10席のこぢんまりとしたスペース。「広すぎず、少人数で回すにはちょうどいいキャパ」(竹野さん)という約20平米の物件は、もともと日本茶店だったそう。内装は“乙女風雀荘”をイメージし、古道具屋で購入した建具に解体家屋から放出された古いガラスをはめ込み、同じくUSEDの椅子やテーブルを配置。店内の壁には、鈴木さんが撮影した餃子とスイカの写真が飾られている。
アクロス,ストリートファッション,飲食,按田餃子,ギョウザ,フードコーディネーター,カメラマン,料理研究家,代々木上原,上原,西原,テイクアウト,通販,水餃子
ラゲーライス定食(青菜炒め、水餃子入り海藻のスープ付き)/1,300円。キクラゲ、金針菜(ユリのつぼみ)、塩豚を中心とした一品。油を使っていないため、夜に食べても胃もたれしない。


持ち帰り餃子は、冷凍餃子か加熱済餃子の二種。冷凍すれば1ヶ月保存できる。生餃子は月曜日のみ購入可能。
女性にうれしいヘルシーなメニューが充実。キャッチフレーズは「助けたい包みたい 按田餃子でございます」。
運営メンバーであるカメラマン鈴木陽介さんによるスイカと餃子の写真。
オープン前にアシスタントチームが作った按田餃子新聞。PR用に配布した。
 メインメニューの水餃子は、国産豚肉と大根をベースにしたものと、鶏肉と塩漬キャベツをベースにした2種類で、油で焼かない代わりに、野菜を塩漬けし醗酵させて素材の味を引き出している。季節ごとに具材を変えているのも特徴だ。自家製の皮は、有機殻付きの有機はと麦を焙煎し粉末状にしたものを配合。血液を浄化する作用があるそうで、美容に気を使う女性にもうれしい。餃子以外のメニューは、ナムルや自家製チャーシュー、百年床の糠漬けなど10種のおつまみのほか、オススメのラゲーライスなどを揃える。客単価は平日の夜で1,000〜2,000円ほど。
 
 
「餃子一皿とビール1杯でちょうど1,000円になる価格設定。そこにおつまみを足したり、もう少しお酒を飲んだりと、その日次第で調整していただけたら」(竹野さん)
 
 客層は20代後半〜30代が中心で男女比は5:5。平日は仕事帰りに立ち寄る人が多く、20時台が最も混み合い、滞在時間は1時間ほどで、「仕事帰りや買い物の帰りに、1人でふらっと入ってさくっと食べて帰る。そんなふうに気軽に利用してほしい」という当初の狙い通りだそうだ。週末(金曜含む)はランチ営業を行っており、家族連れも増えるという。
 
 オンラインストアでは、冷凍餃子やたれ、オリジナルブレンド茶の通販が可能。店舗では加熱済み餃子のテイクアウトも行っており、餃子を仕込む月曜日のみ、生餃子を持ち帰りできる。
 
 運営メンバー全員がメディア関係に従事しているため、市場への打ち出し方や消費者へのプレゼンテーションの方法を体得できている点が同店の強みだろう。中華料理まで広げず、餃子のなかでも水餃子1本に絞ることでコンテンツを分かりやすくアピール。さらにターゲット・シーンも明確化し、今の時代感を「編集」してポップに打ち出す同店のアプローチは、これまでの飲食店になかった新しいスタイルといえそうだ。
 
取材・文:皆川夕美(フリーライター)

按田餃子

東京都渋谷区西原3-21-2

火-木 15:00~23:00(LO22:30)
金土日 11:30~23:00(LO22:30)
月曜定休


大きな地図で見る


同じタグの記事
同じキーワードの記事
2024_0115~ ストリートファッション1980-2020 定点観測40年の記録 アマゾンで購入 楽天ブックスで購入
YOOX.COM(ユークス)