GEEK GARAGE(ギークガレージ)
レポート
2010.03.16
カルチャー|CULTURE

GEEK GARAGE(ギークガレージ)

老舗セレクトショップのDEPTが運営する本格的でオシャレなトラックバイクショップ

タイヤ、ハンドル、などの各種パーツ類
から同社オリジナルのバッグやTシャツな
ども取り扱う。
パッケージは同店オリジナルデザインで
統一。細かな部分へのこだわりを感じる。
完車も販売。手前は乗りやすいサイズで
女性に人気のデザイン。1台5万円〜と
手頃な価格になっている。
街にも自転車にも対応するデザインの
Tシャツやバッグ。同社オリジナル商品。
併設のピットではタイヤ交換から組み立てなど
本格的なサービスが受けられる。ギア比の相談
にも乗ってくれるそうだ。
 原宿、渋谷エリアの路上では、装飾性を極端に排した極めてシンプルなデザインのバイクをよく目にするようになった。これは「ピスト」と呼ばれるもので、一見すると競技場自転車のように見えるが、よく見るとシングルギア、つまり変速機が付いていないのが最大の特徴。ハンドルにブレーキが見当たらない車両も多い。ペダルを逆回転させ 制動を行うからで、自転車競技用のマシンと基本的な構造は同じ。主にアメリカ西海岸のメッセンジャーたちが仕事で使うバイクをモデルに、街乗り用として楽しんでいるユーザーが急速に増えているのだ。

 自転車ブームの中心となるクロスバイク(多目的型のスポーツ車)やロードレーサーにはメーカーのロゴがフレーム目一杯に主張しているデザインのものが多い。しかしピストは、そうした既存の自転車とは異なりあくまでもシンプルなルックスが特徴。フレームにはゴテゴテしたパーツ類はほとんど付属せず、業務用の無骨なデザインが醸し出す機能美が、既存の自転車デザインにはない魅力として映っているのである。

 ピストを街乗りで楽しむ、というスタイルの発信源になっているのは、ローバイクを中心としたいわゆる自転車専門店ではなく、むしろ新規参入してきたショップ群である。なかでも、中目黒にオープンした老舗セレクトショップDEPT(デプト)が運営するピスト専門店「GEEK GARAGE(ギーク・ガレージ)」は、レースやイベントの開催なども行い、この新しいシーンの中で大きな役割を果たしているショップだ。

 「06年に裏原宿のDEPT SOUTH(デプト・サウス)でピストの販売を始めたのがスタートです。08年のSOUTH閉店の際に、明治通りの本店に売り場を移動したのですが、そのうち固定客が増えてきたこともあって路面店の出店に踏み切りました。今でも本店での取り扱いは洋服屋の中の品揃えの一つとして継続していますが、修理やカスタマイズ、コアなユーザー向けの商品などはこちらのショップで行っています」(同店プレス 林俊明さん)

 06年あたりから次第にピストユーザーが増え、DEPTの顧客層などファッション感度の高い層を中心に広がっていったようだ。自転車をデイリーユースで乗りこなす層の広がりもあって、08年頃からは女性客が増加傾向にあるという。
 
 取扱い商品はアメリカやヨーロッパからのインポートアイテムを中心に、タイヤやハンドル、サドルなどの大型パーツから、チェーンをかけるコグやハンドルを固定するステムなどの小型のパーツまで、幅広いアイテムが揃っている。また、同店では好みのフレームを選び、これに適合するパーツをショップと相談しながら選び、自分だけの1台を組み上げることができる。一方、完成車も販売しており、特に最近増加している女性ビギナーには手頃な価格のバイクが好評という。価格は5〜30万円まで幅広く揃う。コアなユーザー層に対応するべく、同店では既存のスポーツ自転車の専門ショップと同等のサービス体制を敷いている。メカニックは2人常駐し、ビギナーからコアファンまで幅広いユーザーに対応。タイヤなどの消耗品の品揃えも厚めに揃えている。

また、同店の特徴であり、強みなのが専門性の一方でファッションと強くリンクしているところ。同社では街着としても自転車の街乗りとしても対応できるオリジナルラインのウェアの販売もしている。「あくまでもファッション感覚を大切にしながら店づくりをしています」と林さんが言うように、ショップの内装はもちろん、取り扱い商品などは一旦包装を外して同店のオリジナルのパッケージに入れ替えて、店全体の雰囲気を統一させるなど、演出にもこだわっている。
  
 スケートボードやBMXのように“トリック”と呼ばれるテクニックを競うエクストリーム・スポーツ感覚としてピストを楽しむ客層の中心は20代だが、自転車感覚で使用する客も含めると、上は40代下は10代までと幅広い層が来店しているそうだ。

 自転車協会調べによると、クロスバイクやロードバイクなどに代表されるスポーツ自転車の普及率が、06年は37万台だったのが08年には42万2,000台に増加し、毎年市場は拡大を続けている。エコロジカルな生活ニーズの高まりや有酸素運動としての有効性などが評価されて、ここ数年首都圏では自転車ブームと呼ばれているような状況だ。メディアもこの現象に注目し、書店店頭には自転車のムックが並び、経済誌までもが大きな誌面を割いて自転車を特集するようになった。また、日頃の通勤や移動に自転車を利用する「自転車通勤族」も増加。2010年1月の定点観測で取り上げた「レギンス男子」のなかには、自転車に乗る日はレギンスを履いていますと回答する人も少なくなく、ファッションとの関連性が変化していることが窺える。

 そんななか、ピストのようなファッション性とカルチャー性を併せ持った乗り物が、ストリートカルチャーの再燃によって若者に浸透したのも自然の流れといえる。同店のような、「ファッション×ストリートカルチャー」をコンセプトにした業態に今後注目していきたい。

[取材・文/渡辺正明(フリーライター/エディター)+『ACROSS』編集]
GEE'K GARAGE(ギーク・ガレージ)

住所:東京都目黒区青葉台1-20-4 
   FORCE BLDG 1階
電話:03-3780-4650


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