macaronic(マカロニック)
レポート
2009.12.25
ファッション|FASHION

macaronic(マカロニック)

スタイリストがブランド&ショップオーナーを務める個性派セレクトショップ

内装のテーマは“神隠し”。「洋服屋には
なくてもいいものがある店にしたかった
んです」と青木さん。
レジにドアやラケットが付いていたりする
エキセントリックな内装も魅力。
オリジナルのmacaronic(マカロニック)
に加え、ANREALAGE(アンリアレイジ)
keisuke kanda(ケイスケカンダ)
など人気ドメスティックブランドが
揃う。
今シーズンからレディスも充実。
女性デザイナーによる国内のレディス
ブランドをセレクトしている。
オーナーでスタイリストの青木さん。
 去る12月5日に実施した第348回定点観測の際に、渋谷でインタビューした、29歳のイギリス人のファッションデザイナーが、好きなショップとして挙げていたセレクトショップ「MACARONIC(マカロニック)」。定点観測では08年頃から、20代前半のファッション好きの男の子に支持されており、今年に入って特に人気が高まっていることから早速取材を行った。

 広告やアーティストのスタイリストとしても活動するオーナーの青木貴志さん(29歳)は、服飾系専門学校卒業後、2003年にロンドンへ留学。翌年帰国し、オリジナルブランド「MACARONIC」を立ち上げると同時にスタイリストとしての活動もスタートする。両立が軌道に乗った2005年8月に同店をオープン。徹底的にハンドメイドにこだわった、クラフト感があるブランドを発信している。

 オリジナルの「MACARONIC」は、メンズとレディースを展開。ブランド名、店名でコンセプトでもある「MACARONIC」は、ラテン語で雅俗混交体を意味する言葉。同ブランドは、“きれいなものと汚いもの”“素朴と洗練”等という、相反する価値観を共存させることをテーマにし、同じパターンを用いても同じ生地は使わない等の、一点ものへのこだわりが反映されている。セレクトの取扱ブランドは、「keisuke kanda(ケイスケカンダ)」「mifune krofune(ミフネ・クロフネ)」「ANREALAGE(アンリアレイジ)」「翡翠」「BLANK(ブランク)」「BLANK×MARCO(ブランク×マルコ)」 「IN PROCESS by HALL OHARA(インプロセスバイホールオハラ)」「TONO(トノ)」「TAKASHI KONDO(タカシコンドウ)」「juvenile hall rollcoll (ジュブナイルホールロールコール)」
VAD&MEL(ヴァッド&メル)等で、すべてドメスティックだ。

 「インポートのブランドは色やサイズ、パターンの感覚が、日本人の体形に合っていないように思います。渡英時に日本の文化が認められていないと感じたこともあり、日本のブランドの良さを発信したいという思いが強いんです」(代表取締役兼スタイリスト・デザイナー/青木貴志さん)。

 青木さんはブランドをセレクトする上で、ビジネスを越えた人と人との繋がりを持てるか、思いを共有できるデザイナーであるかという点を大切にしているという。メンズとレディースの比率は7:3。価格帯は、パンツやアウターが3万円〜、全体的に見ても1万〜8万程度という。

 同店があるのは、原宿から渋谷へと続くキャットストリートを入った恩田商店街。中目黒や代官山よりも、平日でも人通りが多い原宿で物件を探した。白を基調とした店内は、2009年11月に改装したばかりで、テーマは「神隠し」。什器制作等を手掛けるクリエイティブユニット・magma(マグマ)が作った大きなロボットがあったり、カウンターをドアで装飾していたり、アパレルショップに無くていいものをあえて取り入れることで、洋服が空間の合間から見えるような独特の世界を作っている。

 同店では、各セレクトブランドの受注会をはじめ、さまざまなイベントを開催。2009年12月公開の押井守監督による映画「ASSAULT GIRLS(アサルトガールズ)」とのコラボレーションとしてTシャツやキーホルダー等を制作した。

 また、2009年11月20日〜12月21日の期間で、オリジナルの即売会である「ツアー」を実施。今回が初めての試みで、仙台・新潟・静岡・大阪・福岡の全国5都市のセレクトショップをまわり、商品を販売した。同店と各ショップのHPで告知したのみにも関わらず、どこも開店前から客が並ぶほどの盛況ぶりだったそうだ。

 「うちの商品は手作りの1点ものが多く、オンシーズンで作っています。受注会だと商品が届く数カ月後にはその商品を欲しくなくなる恐れがありますが、オンシーズンで作った商品の即売会なら、お客様にはそのときに欲しいものをすぐに買っていただけます。地方客を東京に呼ぶのが普通の考え方でしょうが、当店にしかできない企画として、こういったツアーを開催しました」(青木さん)

 客層は20代・30代が中心で、男女比は8:2。常連客には50代や、芸能関係者等もいるそうだ。ファッションにこだわりがある人が雑誌等で情報を得て足を運んだり、スタイリストとしても活動する青木さんが店頭に立つ日は、会いに訪れたりするケースも多いそうだ。

 旬な洋服を旬な時期に届けられるオンシーズン生産の明確な強みと、ドメスティックブランドにこだわった品揃えという特徴を持つ同店は、現在のマーケットが求めている、値ごろ感や毎日気負いなく着られるリアル感を満たすことができるのが人気の理由だろう。

 ここのところの定点観測インタビューでは「どこで買っても同じ」「面倒だからネットや駅ビルで買う」というように、こだわりの薄さや情報に対する受け身の姿勢が感じられてならない。さらに、手軽に利用できるECの一般化で、いつでもどこでも買えることが、逆に「いつ買ってもいい」→「今は買わない」と買い控えを助長させているようである。そんななか、希少性や独自性を活かし、ユニ—クな仕掛けづくりを行う同店は、低迷する全国各地のショップに今後ますますいい風穴を開けてくれそうだ。

 今後は、展示会でもコレクションでもない、発表の新しい形を東京で行いたいそうだ。


[取材・文/緒方麻希子(フリーライター/エディター)+ACROSS編集]
■macaronic(マカロニック)
住所:東京都渋谷区神宮前6-8-6國枝ビル
TEL:03-5466-2295
営業時間:12:00〜20:00


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