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OP.00302(オプスサンマルニ)
レポート
2009.07.08
この記事のカテゴリー |  カルチャー | 

OP.00302(オプスサンマルニ)

ディープ東京・西日暮里のカオスなギャラリー/ショップ

両端が出店オーナーの岡島君(右)と武井くん
(左)、まんなか2人が当スペースオーナーの
園田くん(ロングヘア)と岩坂さん
マーケティング会社でのアルバイトで知り
合った2人。モノや情報が動くさまと、関
わる人の繋がりに興味をもったのだそう。

1カ月交代でお店を運営!?

 西日暮里は谷根千エリアや上野にも近いのだが、こうしたエリアに集まる一見さんからの視線が届かない、なかなかにディープな土地だ。JR西日暮里駅から徒歩約3分、昭和の香りがまだ残る一角に学生がひと月交代で運営するショップ”があるというので、さっそく取材に出かけた。

 店名は「OP.00302(オプスサンマルニ)」
。クラシック音楽のような作品番号とビルの302号室というロケーションがショップ名の由来だ。

 築30年は余裕で経過していそうな雑居ビルの3Fにある室内は、広さおよそ30平方メートル。1つの壁面に作りつけの棚がしつらえてある以外は、古い部屋の味わいをそのまま使用している。商品棚などの什器はなく、かなり年季の入った木製の棚が微妙なバランスで配置され、古着や古書、小さなオブジェ作品などが並んでいる。部屋の一隅にはギターとアンプが置かれていて、これも違和感なく収まっている。

オープンは2007年。運営するのは20代の園田空也さんと岩坂昌倫さんの2人である。取り扱う商品は古着・アートピース・古書・陶器などで、あえてカテゴライズすればリサイクルショップだが、2008年12月からは、 “学生がひと月お店を運営する企画” を開催。ギャラリーとしての顔が加わった。

同店が在庫として持っている商材に、企画を運営する学生側は商品や作品を持ち込み、自由裁量でショップを運営するという仕組みで、企画展のルールは以下のような感じだ。

・開催期間は1ヵ月(準備期間を除く)
・うち15日間を開店日とする
・店内のレイアウト変更は自由。ただし費用は運営者が負担
・売上/釣銭の管理は運営者が行う
・売上の一定割合が運営者に支払われる(商品の種別毎に歩合は異なる)

取材に訪れた2009年6月の時点では、岡島飛鳥さんと武井将太さんの2人が運営する「302/365」という企画が開催されていた。これが通算3つめの学生運営企画だという。

展示されている作品はこの岡島さんと武井さんの持ち込んだもので、ショップ側が在庫として持っている商材とは明確に区別されず、混然一体となっているところが面白い。
岡島くんと武井くんのプロフィール。
ともに1989年生まれの現役の学生だ。
まるで夏休みの自由研究のように「自由」な
発想による作品、リキュール。来訪者も「自
由」に体験(飲む)ことも可能。

表現の場としてのショップ空間

 このスペースを運営する園田さんと岩坂さんの出会いは、あるマーケティング会社のアルバイトだったという。ともに音楽好きで2005年に「表現(hyogen)」というバンドをスタートした後、友人が運営する武蔵小山の「マカロニクラブ」というバーに携わるように。同店は個性的なオーナーで、ビル自体のデザインも変わっていて地元ではちょっと知られた場所だったのだそうだ。

 そのバーが閉店した後、2006年に田端の廃カラオケパブをバンドの活動拠点として貸りることに。
「バンドの練習のためにいちいちスタジオを手配するのが嫌だったんです。たまたま見つけた物件で、再開発による解体までの限られた期間だったんですが、広さは100平方メートル以上でステージもあるし、ライブも開催できるので、思い切って借りることにしたんです」(園田さん)。

 翌07年、予定通り、彼らは同ビルから退出を余儀なくされるが、その頃より並行してショップの準備を進めていたという。

 「もともとこのビルに住んでいるんですが、入居する際に紹介された2部屋のうちの1つがここなんです。ずっと空き部屋でしたし、三角形の面白い空間だし、ショップをやろうかと考えた時にまず思いついた場所がここでした。僕は古いものが好きですし、商売としてやりやすいと思い、リサイクルショップを選んだんです」(園田さん)

 「2人ともファッションが好きだったことがベースにあります。そこに当時のマーケティング会社でのアルバイトをきっかけに、興味を抱いていたモノを売ることだけでなく、ひとつ1つのモノの背景を知ること自体にも興味がありました。そういった活動の土台として、店という形態はいいな、と思ったんです」(岩坂さん)。

 什器として使用されている古い家具は、西日暮里で偶然みかけた閉店作業中の洋品店から譲り受けたものを使用しているのだという。集めたリサイクル品やボールペンでシャツに手描きでイラストレーションを書き加えたオリジナルの商品を加えたり。

 賃貸のコストは安いものの、やはりフリーの集客が見込めない立地であることは否めないため、どうしよう、と考えた結果、集客と宣伝を目的に、07年12月から店内でイベントを開催するようになったというわけだ。

 第1回目は「食べる」、2回目は「op.00302の視点〜価格の決め方〜」というテーマでイベントを開催したそうだが、
「その時はショップ全体で僕らの考えていることを表現しようとし過ぎてしまい、当初の目的の販売にはあまり結びつきませんでした」(園田さん)。

6月末から開催中の「BOOK OFF / ZINE OFF」。
店長の山本悠くん(白いシャツ)は多摩美の
2年生。
取材時にも自作のZINE(ジン)を持ち込む学生
が訪れていた。タイトルは「旅行」。これは、
コラージュでタイトルを文字化した裏表紙。
7月10日〜12日まで表参道のSC「GYRE
(ジャイル)」で開催されるZINE
(ジン)とアーティストブック初のブック
フェア「ZINE’S MATE(ジンズ・
メイト)」にも出展するというデザイン会社
の人も納品に。

SNSのように連鎖するネットワーク

“学生に1か月交代でショップの運営を担当させる”、という現在の企画にたどり着いたのは、他者を巻き込むかたちでショップを人が集まる場にしていきたい、という狙いからだったとか。主催する学生はショップ運営の中で自分のアイデアを「企画」という形で表現し、そこに集まった客たちの中から“自分ならこうしてみたい”という欲求が生まれ、次の企画へと繋がっていくというわけだ。

 「店長としてお店を運営した方に、次の運営者を連れてきて引き継いでもらう、という形にしています。SNSのコミュニティやマイスペースから発想したもので、コミュニティに集まった人の中からヒトがつながり、動くサイクルが生まれてくれば面白いなと思ったんです。僕らの周囲にも個展やグループ展を開く学生はいますが、展覧会はコストもかかるし大変そうに見えました。ならば僕らのショップを発表の場として使ってもらって、主催者がお店を運営してお客も連れてきてくれるのであれば僕らとしてもありがたいなと思ったんです」(岩坂さん)。

 「僕は音楽環境創造科という特殊な学科を卒業しているのですが、音楽に限らず芸術の環境づくりをテーマに研究していました。しかし、アートをアートとして創作することに限界を感じたというか、もっと面白い、広がりのあるトータル的なところで表現してみたいと思ったんです。空間そのものが絶えず変わっていくようなお店にしたい、と開店当初から思っていたんですが、この企画を始めてからそれがうまく実現できたと思います」(園田さん)。

 期間限定の店主として企画を運営していた学生の意識はどうだろうか。ちなみに運営者を務めていた2人はともに現役の芸大生だ。

 「前回の企画の担当だった友人から紹介されたのがきっかけです。作品を展示するということ自体が初めてですが興味はもともとあって、発表の場を求めていました。最初にここに来たとき、全体が部屋でもお店でもない、異様な空気を放っていたのでそこに惹かれました。学校で作品をつくる環境とは違いますし、そもそも課題とは別に、また違った面白い展示の仕方があるのではないかと思ったんです。美術をふつうの人にとって身近に感じてもらいたいと思い、気軽に楽しめるような作品を揃えて展示しました」(武井将太さん)。

 「僕は都市そのものが好きで歩き回るのが好きなんですが、西日暮里という場所自体が異様なオーラを放っていることに、まず興味を持ちました。特にこの部屋は他にない面白さがありますね。また、美術の展覧会だと、観客同士がコミュニケーションを取ることはほとんどありませんが、ここでは知らなかった人同士がこのスペースに集まってコミュニケーションを取れるので、活気が生まれて面白いです」(岡島飛鳥さん)。

表現を志す学生たちの作品発表の場は、ギャラリーの展示だけではなく「デザインフェスタ」「GEISAI」といったアートイベントなど、近年その裾野は大きく広がっている。また、ブログmixi(ミクシィ)My Space(マイスペース)Twitter(ツィッター)などのウェブ上のスペースを使えば、ビジュアルアートでも音楽でも、作品を世界中で鑑賞されることすら可能な時代でもある。

しかし、そういう環境(インフラ)が整っている現在だからこそ、ショップのオーナーと企画を持ち込む学生の側双方のコミュニケーションが、「リアルな場」、しかも、西日暮里という土地/古いビルの一室という空間の面白さに、こだわりを見せている点が面白い。

 ちなみに、武井さんと岡島さんの次は、個人や有志で発行する、個人や有志で発行する出版物(zine)と社会に流通する古書を扱う「BOOK OFF / ZINE OFF (ブックオフ/ジンオフ)」が7月24日まで開催中。

 「これは新しいシーンに息づく生きた情報を収集、整理し、発信していく試みです」と言うのは店長の山本悠さん。やはり現役の多摩美の学生だ。

 「海外から輸入され、いまだ日本で定着しているとはいえないzine(ジン)という言葉ですが、今後あらためて、ツール、対象、そして環境において、一つの選択肢になりうるのではないか、という期待から企画しました。“東京でいちはやくzineを取り扱うショップ”の姿を示すべく、期間中、みなさんからのzineの収集と販売を行っています。スタートして1週間ですが、すでに約30冊ものzineが届きました。およそ60人の参加者のzineが到着する予定で、お店に並ぶzineは毎日増えつづけています。当店で取り扱ったzineをまとめたカタログも製作する予定です」(山本さん)。

 この、ほかでは得難い空気を持つ小さな実験スペースからどのようなものが生まれてくるか、今後も興味深く見守ってみたい。

[取材・文:本橋康治+『ACROSS』編集部]


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