インタビュー@文化服装学院 入学式
レポート
2009.07.29
ファッション|FASHION

インタビュー@文化服装学院 入学式

時代を牽引するであろう「デジタルネイティブ世代」にインタビュー

1980年代後半以降に生まれ、子どもの頃から生活の中で、インターネットに親しんでいた「デジタルネイティブ世代」。最近の定点観測でもポップでキッチュなファッションをする若者が増えており、その大半がこの世代だったことから、クリエーターのタマゴが多く進学するであろう文化服装学院の入学式を「不定点観測」。その新しいクリエーションに出会ってきた。

2009年4月6日(月)、場所は同学院内にある遠藤記念館である。多くの科とコースがあるため、入学式は午前と午後2回に分けて行われた。今回は昼の12時頃に実施。当日の天気は晴れ、最高気温19度と入学式には適したいい天気となった。

新入生のファッションはというと、男女ともにスーツやジャケットの着用が多く、きちんと感のある着こなしが主流で、予想していたよりもどこか地味な印象。一方、コムデギャルソン(COMME des GARCONS)のローリングストーンズ柄の奇抜なスーツや、ピンクやイエローなどの原色を多用した派手なジャケットなど、個性的な着こなしの集団も。カジュアルなカットソーや、スキニーデニム、スニーカーなど、街で見かけるコーディネートそのものという人も目立っていた。そのほか、定点観測でも定番になりつつある「ミニ丈ボトムス」の着用が目立ち、油絵風の柄やバティック柄、ボーダーなど、今年注目のトレンドが多くみられた。

インタビューをしたところ、洋服は「アメリカンアパレル(American Apparel)」「ジーナシス(JEANASiS)」「H&M」などのSPAブランド着用がほとんど。洋服は街と同じでも、チュール付きのハットや大きめのヘッドアクセサリー、大ぶりのネックレスなど小物類を多用したスタイルや、ゴールドやブルー、ピンクなどの派手なヘアカラー、バサバサの付けまつげに大粒ラメとカラーコンタクトに真っ赤な口紅というド派手なメイクの子も。また、ぬいぐるみとかごバッグを持ち、顔には眼帯を付けるといった、大胆な小物使いをしている子もいた。普通のアイテムに小物をいくつも合わせた「足し算コーディネート」で“ハレの日”仕様にしているところは、この世代ならではのエネルギッシュ且つポップで新しい感覚だ。

「私が文化に入学した80年代はDCブランド全盛の時代で、入学式前に探し回って自分のお気に入りのDCブランドを見つけて、晴れて入学式に着ていくという人が多かったように思います。それに比べ、最近は大人しい印象を受けますね」と、同学院ファッション流通専攻科ファッションメディア専攻の高崎利々子先生は話す。

一方、人数的には少数だが自作の洋服で全身をコーディネートしている人や、「妖怪ばばあ」や「風変わりな花嫁」など、過去に行ったCANDY 2nd ANNIVERSARY PARTYFaline Tokyo 5th Anniversary Partyの時と同様、既成概念にとらわれない自由な着こなしをする人も。「入学式だから誰よりも目立とうと思った」や「普通とはずれた世界観が好き」など、トレンドを敢えて無視して、個性を主張する伝統的な表現スタイルも健在だった。

「自分が着たいものを着る、その気持ちそのものが文化服装学院の“ファッション”だと思うので、そういう意味では今も昔も変わらないと思っています。アイテムがどうとか、どこのブランドではなく、自分の好きな服を誰よりもかっこよく着こなす、それが文化服装学院の基本だと思います」(高崎先生)。

憧れのブランドや、そのアイテムを「着ることが」自己表現だった時代から、確実にふつうのアイテムを「コーディネートやアレンジすること」へと変化しているということだろう。

07年から続くワンピースや、ボリューム化しているツーピースに見えるコーディネートワンピースなど、コーディネート能力を必要としない“没個性スタイル”の人気が継続している。近年の定点観測のインタビューでも頻出する「自分が着たいものを着る」「個性的な人に憧れる」など、流行を追うのではなく、個性を重視した着こなしをする層は確実に増加している。

とはいえ、上京をきっかけにPCは買えないが、インターネットは利用したいから携帯をi-phoneに買い換えた人や、入学式前にmixiの「09年文化服装学院に入学する人」のコミュを介して事前に知り合ったという3人組など、周囲の様子を伺う慎重さを合わせ持つのが、この「デジタルネイティブ世代」の特徴ともいえる。新しい価値観とフットワークの軽さを持った、この世代の今後に注目したい。
[取材・文/『ACROSS』編集部]
[撮影/阿部智将]




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