Gallery Countach(ギャラリーカウンタック)
レポート
2008.12.04
カルチャー|CULTURE

Gallery Countach(ギャラリーカウンタック)

史上最年少ギャラリストが運営するコンテンポラリーアートギャラリー

ギャラリストの八木沢俊樹さん。
1983年生まれの25歳。
ギャラリーの隅にはミニチュアのジオラマが!
岸田劉生の「麗子像」や高橋由一の「鮭」など
近代日本洋画の名作を鑑賞している。
「カウンタックが子供の頃から大好きで、
ギャラリーに付けたら面白いなと思って
決めたら、予想の他30〜40代の大人の方々
にウケが良くて、名前負けしないように
なって思ってます」(八木沢さん)。
山内崇嗣氏のペインティング。現在、9人の
アーティストの作品を取り扱っている。
ギャラリーの入り口。
閑静な住宅街の真ん中にある。
今、注目すべきスポットは、都心から少し外れた場所にある。なぜなら「何か新しいことを始めよう」という若者は、家賃の安い、都市の隙間を縫うような周辺エリアに「場」を開くからだ。

2004年に21歳でギャラリーを開いた史上最年少ギャラリスト、八木沢俊樹さんの運営するGallery Countach(ギャラリー・カウンタック)は、新宿区西落合にある。隣の椎名町(現住は合併して南長崎)には、かつて石ノ森章太郎や藤子不二雄ら漫画家が住んでいた「トキワ荘」があった場所だが、周辺にショップなどは少ない閑静な住宅街だ。都営大江戸線の落合南長崎駅から新目白通り沿いに5分ほど歩いてたどり着いたのは、何の変哲もない古いビル。「本当にここでいいのか?」と思いながら外階段を上ると、ギャラリーのサインが見えてくる。3階の2部屋を借りており、一部屋がギャラリーという構成だ。もう一部屋が八木沢さんの住まい。フロア面積40平米のギャラリースペースは、自身で壁にペンキを塗り、床を張って改装した。ここへ、20代〜30代のアートファン、ファッションやデザイン関係者をはじめ、耳の早い人々がクチコミで集まってきている。

神楽坂のユカササハラギャラリー、新富町のアラタニウラノなど、アートバブルともいわれたこの2〜3年の間に、第2世代といわれる若手ギャラリーが次々とオープンした。ギャラリーで経験を積んで独立していく例が多い中で、八木沢さんの経歴は異色だ。八木沢さんは、もともと地元の福島で音楽を手がけていた。レコード契約を機に上京したのだが、自分の好きなことができないとわかり、その話を断る。そして、音楽の新たな発表や表現方法を求めて、このスペースを開いた。最初は、様々なジャンルの人とのつながりを求めてイベントスペースとしてスタートし、一人でチラシを配りながらDJパーティーなどを開催。編集者に誘われてアートスペースにも足を運び、若いアーティストと親交を持つようになる。専門的な美術教育は受けていないが、子どもの頃から美術館に行き、アートにも興味を持っていた八木沢さんは、道なき道を開拓するアーティストに共感を抱く。そして、徐々にアーティストのマネジメントを行うコマーシャルギャラリーとして企画展を行うようになった。八木沢さんは「面白ければ必ず人は来てくれる。わざわざ足を運んでもらうためには、クオリティの高い企画をやらなければと思い、随分鍛えられました」と語る。

取り扱っているアーティストは、現在9名。最近では、平面作品の選抜展「VOCA展2008」に山内崇嗣、東京オペラシティアートギャラリーの「プロジェクトN」に近藤恵介が抜擢されるなど、それぞれに活躍の場が増え、特に海外のコレクターからの評判が高い。全体的には明るくポジティブな作品が多い。「アメコミの《シンプソンズ》みたいに、皮肉や毒はあるけど、笑っちゃう感じがいい。また、いかにも現代美術というよりクラシックなものに新鮮さを感じる」という八木沢さん。時代に迎合したような流行ものには惹かれない。

また、アート界の常識に捕われないプロモーションも心がけている。勝政光を「アート界のジミヘン」と名付けてみたり、それぞれの作品についても、たとえ偏っていても一視点を打ち出した紹介文を書くようにしたり。「美術界って、スノッブで堅いイメージがありますよね。わからないものをわからないと言いづらい雰囲気がある。つまらないものを理屈づけるのは、受けないギャグをなぜオモシロいか説明することに似ていると思います」。八木沢さんが理想とするのは、「国境を越えて、あるいは子どもが見てもいいと思える作品」だ。

ちなみに「カウンタック」とは、イタリア語で「すごい!」という意味で、披露会で発せられた言葉に由来する。一見して人々を魅了するカウンタック。アートも、イチかバチか、世間の予想を裏切るようなものであるはず。「人々を驚かすような創造は、守られた、保証があるところからは生まれない」というのが、八木沢さんの持論だ。今後は、海外にもっとネットワークを広げていきたいという。アートに限らず、自分で枠組みをつくるところから始めてみると、世の中の見え方も変わってくるような気がした。

ちなみに、同ギャラリーでは07年から新宿区西新宿でアートバーGalaxy Countach(ギャラクシーカウンタック)を運営していたが、08年11月でいったん閉店。09年1月から、Gallery Countachの近くに移転リニューアルオープンする予定だそうだ。

〔取材・文:白坂ゆり/フリーライター〕

Gallery Countach(ギャラリーカウンタック)

http://www.gallery-countach.com/

東京都新宿区西落合4-3-1 フジビル3F
Tel&Fax.03-6915-3888


大きな地図で見る


2024_0115~ ストリートファッション1980-2020 定点観測40年の記録 アマゾンで購入 楽天ブックスで購入
YOOX.COM(ユークス)