shop btf(ショップ・バタフライ・ストローク)
レポート
2008.10.14
カルチャー|CULTURE

shop btf(ショップ・バタフライ・ストローク)

広告クリエイター・青木克憲さんの個人的セレクト“ショップ”が勝どきに登場

ジャンクな倉庫の雰囲気が雑貨〜レアな
アーティスト作品まで扱う幅広い
セレクトにマッチ。
シルバーの巨大な人形はハリウッド映画に
登場するキャラクター「ゴート」(135万円)。
片隅にはちょっとしたドリンクスペースも
ある。一見フツーに見えるも、棚の上には
エイリアン・・・!という遊び心がバタフライ的。
ルイヴィトンのフェイクバッグをモチーフに
したトートバッグ(18,900円)はアーティスト
Zinoo Park(ズィヌー・パーク)の作品。
基本的に店内にあるもの全てが売りモノ。
妙にマッチしていたゴヤールのヴィンテージ
トランク(105万円〜)とダミアン・ハースト
の「ダイヤモンドスカルTシャツ」(16,800円)。
毛皮を着たベアブリック(10万5,000円〜)
の後ろには、ブルース・ウェーバーのポスター
(108,500円/額装済み)も。ベアブリック
のアクセサリーはなんとジュディ・ブレーム。
4Fには「Ota Fine Arts
(オオタファインアーツ)」も入居する
知る人ぞ知るニュースポット。
こんなところにショップが!?という立地に
興味がかき立てられる。
広告の企画制作を中心に手掛けるバタフライ・ストローク・株式會社が2008年7月、中央区勝どきにクリエーター/アーティストのセレクトしたアイテムを販売するセレクトショップ「shop btf(ショップ・バタフライ・ストローク)」をオープンした。店内の商品は、バタフライ・ストローク代表のアート・ディレクター/プロデューサー 青木克憲さん自らが集めてきたもの、セレクトしたものを中心に構成されている。

 店舗面積は約100平米。高い天井の店内には、ジェフ・クーンズの巨大なビーチタオル、ブルース・ウェーバーのビンテージTシャツ、国内に1セットしか存在しないアルキズームのソファ“サファリ”といったアート系のアイテムが並ぶ。また、日本ではふつうに手に入らない海外のミュージアム・グッズもセレクト。

さらにミッドセンチュリーの椅子、ヴィンテージのトイ、ゴヤールのヴィンテージトランク、デザイン・アート関連の書籍や雑貨が、数百円〜百万円以上のものまでと価格もジャンルもさまざま。もちろん、「Copet(コペット)」「Kami-Robo(カミロボ)」などバタフライ・ストロークがこれまで生み出し、マネージメントしてきたキャラクターの関連アイテムもある。商品動向としては、現在は身近な業界に向けてアプローチをしているため、アート系/デザイン系のモノを中心に動いているようだ。店内に置かれている商品や什器は、リースも可能。

今回出店したのは、会社を興して間もない頃に事務所として使用し、その後倉庫兼資料室としていたスペース。什器も以前から据え付けてあったものをそのまま生かし、商品も青木さんが“面白い”と思って公私を問わず買い集めてきたものがベースとなっているそうだ。

「僕がこれまで集めてきた家具や雑貨は、収集すること自体が目的ではなくて、自分がなぜそのモノに惹かれたのか、使いやすいのか、いいのか悪いのか、価値があるのかないのか、そういったことを理解するために買ったものです。それを面白いと感じた漠然とした自分の気持ちを突き詰めて、自分なりの答えを見つけるためにその物を手にする。モノに触れて理解して、自分の中で納得したいんですね。そうやって買い集めてきたものが倉庫いっぱいになったので、お店を作って売りさばいてしまおうと思ったのが、このショップを始めた理由の一つです」(青木さん)。

今回の出店には、広告という仕事に携わる青木さんならではの狙いもある。

「もう一つは、これまでも自分の肌感覚で、今はこういうものがウケるんじゃないか、こういう時代なんじゃないかということを考えながら仕事をしてきましたが、自分が思っているように世の中は動いているのか、という疑問がありました。自分の価値観に響いたものを集めてきて、それが現在、人にどう受け止められるのかをショップを通じて体感してみたいと思ったんです」(青木さん)。

 広告表現やプロモーションに携わってきた青木さんとバタフライ・ストローク・株式會社だが、2003年からはキャラクターのマネージメント管理やライセンスビジネス、マーチャンダイジング展開へと活動のフィールドを広げ、2次元の表現からモノづくりへと発展してきた。この「shop btf(ショップ・バタフライ・ストローク)」は単なるショップではなく、青木さんの個人的マーケティングの場でもあるわけだ。
 
「映像やデザインは、DVDなどで後から見直すことができるけれど、たとえばバスタオルや灰皿や椅子の良し悪しは、生活の中で繰り返し触れていことでわかるものです。そういうことが意外に、モノを売るという商売の基本にかかわる部分だと思うんです。僕がやってきた広告の仕事でも、たとえばジュースの広告のような日常的なモノだったりするわけで、日常的なものの機能美や造形のよしあしをきちんと理解することが生きてくる。
 例え凄くいいCMを作ったとしてもモノが不味ければやっぱり売れない。モノを売るときも、見る、触る、音がする、匂いがあるとか、五感を刺激するということが大切だと思うんです」(青木さん)。

同時に、このショップでは少人数に限定したトークショーを毎月開催している。ゲストは伊藤弘(グルーヴィジョンズ)&長山智美(インテリアスタイリスト)、柳本浩市(Glyph.代表)、森チャック(アーティスト)&菅原そうた(CGマンガ家)という顔ぶれだ。人選は、商品と同様、青木さん個人が“面白そうだから会って話を聞いてみよう”“面白そうだから一緒に仕事をしてみたい”と感じた人たちという。

「これまで仕事でやってきたことを公開でやっているような感じですね。今までも、すごく興味がある人にはきっかけになるような仕事がなくても会いに行ったりしてはいたんですが、トークイベントにゲストとして呼ぶことで、どういうことを考えているのかを公開の場で聞いたり、その後、飯でも食べながらさらに詳しく話ができれば、ただ個人的に会うよりもいろいろな側面が分かって面白いと思うんです。観客の反応も含めて見ることができますしね」(青木さん)。

 今後は青木さんの交友関係やトークイベントのゲストが作る作品やグッズ、収集した物などを商品として預かり、ショップに置くという形で商品を増やしていくという。
 
「現在は僕のものが過半数という状態ですが、いろんな人のモノを増やしながら徐々に棚を変えていく予定です。商品を預かって置かせてもらう場合は、それを売って利益を出すことが最終目標というわけではなく、その人が置かせてくれることが面白い、という点が前提。とにかく店名にあるように“ショップ”という大枠を持って、いろんなことができる場を作っていきたいです。あわよくば飲食みたいなこともできるようなスペースにできればいいですね。売れ筋とかブームに乗ったものではなくて、自分なりの目利きみたいなものを大事にしていきたい」(青木さん)。

 実は、同じビルの上のフロアには08年、コンテンポラリー・アートの「Ota Fine Arts(オオタファインアーツ)」が移転してきたばかり。現代美術のギャラリーが集まる清澄白河とも大江戸線で10数分の近さだ。アートからグラフィックデザインなど多様なジャンルに跨がったモノが集まる場として、今後の変化に注目したい。


[取材・文/本橋康治(フリーライター)+『ACROSS』編集部]


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