GREGORY Tokyo Store(グレゴリー・トーキョー・ストア)
レポート
2008.10.02
ファッション|FASHION

GREGORY Tokyo Store(グレゴリー・トーキョー・ストア)

ショルダーバッグ、デイパッグ、ポーチなど
豊富に取り揃えている。
「GREGORYパックレンタルシステム」は
同店限定サービス。
バッグ以外にアウトドア小物も取り 揃える。
2階へと続く外階段は緑が多く、自然を
取り入れた造りになっている。
08SSから登場のキッズシリーズ。パステルを
基調としたかわいらしい色合いが特徴。
バックパック専門ブランドとして日本のアウトドア層やカジュアルファッションを好む層にも人気の高いグレゴリーが、08年7月4日に東京・原宿のキャットストリートに国内初のフラッグシップショップ「GREGORY Tokyo Store」をオープンした。運営は、グレゴリーの輸入販売を執り行う株式会社エイアンドエフ

GREGORY(グレゴリー)は1977年、カリフォルニアのサンディエゴで山小屋風の小さな店からスタートした。創業者ウエイン・グレゴリーは、カリフォルニアの大自然に囲まれて育ち、アウトドア・アクティビティーに親しんできた人物だ。自身の豊富な経験から得たアイデアを盛り込んでバックパックを製造販売すると、当時台頭していたヒッピーカルチャーのアウトドアライフ信奉との相乗効果で話題を呼び、米国はもちろんのこと、ヨーロッパやアジア諸国のバックパッカーの高い信頼を得た。今では、世界中の旅人が憧れる老舗のアウトドアブランドのひとつである。

バックパックにこだわり続けた30年の歴史と理念を具現化するフラッグシップショップの準備は、07年に始まった。

「本国アメリカでは、登山をはじめとするアウトドアアクティビティー用のハイエンドパックとしての認知度が長く定着しているため、クラシックなデイパックやデイリーユース用のショルダーバッグは展開しておらず、オンリーショップも台湾にあるだけでした。一方、日本ではアウトドアをファッションの側面から捉える風潮があり、特にファッションの趣向が顕在化する10歳代から20歳代に訴求するために、どのような地域にどのような建物で表現するのがベストかという視点で計画が進められました」とは、同社マーケティング部グレゴリーチームの増井琢也さん。

これまで、日本におけるコアターゲットは、中高年の登山愛好や、30歳代の団塊ジュニア世代、それに憧れる20歳前後の男性。野外フェスブームや、ドレッキングやトレイルランニングといったアウトドアスポーツ人気が高まり、スポーツテイストやアメリカンカジュアルがトレンドを牽引するブランドのひとつに。また昨年頃より、再びアウトドアアイテムを街中で活用する若者が増え、10歳代後半や20歳代のいわゆるエントリー層のさらなる拡大を目指そうと、キャットストリートへの出店を決めたのだそうだ。

「当社の若年層への認知度アップにつながることはもとより、Columbia(コロンビア)THE NORTH FACE(ノースフェイス)patagonia(パタゴニア)MILLET(ミレー)など、近隣の各アウトドアメーカー直営店とタッグを組み、アウトドア情報発信地という原宿エリアの新しい側面を出すことで、アウトドアブランドとしての可能性が広がるという目論見もあります」(増井さん)

同店の前身は、1階がカフェで2階がアパレルの店舗。敷地は鋭角の三角形状で、広い空間が取りにくいという印象だが、増井さんはむしろこの形状に魅力を感じたという。

「創業の地であるサンディエゴの山並みや森林、そこにある山小屋を想起させつつ都会的な店づくりを目指していたので、むしろこの狭小で変形の敷地をメリットに転化できると考えました。それに敷地の隅にある大きな樹木。これは森の一部分という感じで、憩いの場所にふさわしい。当店のアイコン的存在になると思いました」(増井さん)。

店舗設計は鈴野浩一さんと禿(かむろ)真哉さんによるユニット、トラフ建築設計事務所が担当した。老朽化したホテルをリノベーションしたCLASKA(クラスカ)の長期滞在客室「テンプレート・イン・クラスカ」(目黒区)や、ナイキ・プレスルーム(目黒区)などの作品で知られる新進気鋭の若手建築家だ。建物の構造はそのままにリノベーションし、1階をライフスタイルパック商品用のフロアに、2階のテクニカル商品用のフロアでは、大型リュックやバッグパッキングに適したシリーズなどを扱い、2フロア合計で約20坪。階段は外付けだが、エントランスにそびえる大樹と調和し、2階に行く時はツリーハウスによじ上るような気分が味わえる。

30歳代前半の鈴野さんと禿さんも本計画を大いに楽しみ、自然をテーマに様々な工夫を施したそうだ。特徴的なのは、外壁の素材。ごつごつしたテクスチャーの黒い壁面全体に、セラミック細粒子をランダムに散りばめたもので、太陽光線に反射し輝くという。無機質なファサードのきらめきは、大自然にそびえる無骨な山肌の畏敬を思わせる。また、店内の商品ラックは、間伐材を利用した集成材OSB(Oriented Strand Board)を使用。尾根のような形状にカットされた仕切りは、空間に程よい荒々しさを演出している。

同社で展開しているほぼ全ての商品が一堂に会するのも、本フラッグシップショップの大きな魅力だ。価格帯は、普段使いやレジャーに使えるショルダーバッグが1万円前後、デイパッグやリュックはおよそ2万円〜3万円台、ポーチなどの小物は5,000円程度からある。カラー展開も豊富で、フューシャピンクやホライゾンブルーなどの、鮮やかな色相が好まれる傾向にあるという。また、今回の出店に伴いオリジナルのロゴピンズとステッカーを限定発売。1万円以上を買ったお客様には数量限定でオリジナルピンズをプレゼントしており、今後は、定期的に違うデザインを作成し、コレクターズアイテムとして展開する計画だという。

同社が他社に先駆けて取り入れた仕様として、登山用バックパックにはユニセックスモデルでS、M、L。レディースモデルでXS・S・Mのバックレングスサイズ展開がある。

「人によって靴のサイズが違うように、背中のサイズも違います。同じ容量のパックでも背中の長さや厚み、ウエスト周りに応じてサイズを合わせます。シリーズによっては付け替えも可能なので、ショルダーハーネスとウエストベルトのサイズ違いを組み合わせることもできます」(増井さん)。

シューフィッターならぬパックフィッターとしてスタッフが一緒に選んでくれるのだが、やはり実際に山で使ってみないと決断できないという人には、同店限定の「GREGORYパックレンタルシステム」が便利だ。対象商品1点につき2,100円の料金を支払うと最長2週間貸し出され、商品を実際に試すことができるというサービス。そのまま購入する場合は、商品価格からレンタル料が差し引かれるというもの。創業時から言われている「Don’t carry, wear it」の言葉通り、洋服を着る感覚と同じ背負い心地にこだわる同社ならではの心意気といえよう。商品にもサービスにもグレゴリーエッセンスが浸透した小ぶりながらも大きな存在の店舗である。

[取材・文/フリーエディター・ライター藤原祥子+『ACROSS』編集部]


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