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paxi house tokyo(パクチーハウス東京)
レポート
2008.04.18
この記事のカテゴリー |  飲食・フーディング | 

paxi house tokyo(パクチーハウス東京)

連日満員御礼!
パクチー料理を専門とした
"交流する飲食店"

広々としたアットホームな店内。
小さな子どもへの影響を考え、終日完全禁煙
にしている。
全てIKEAで購入したという家具は合わせて
10万円程度(!)。コスト削減のため
床板も建築資材を利用したのだそう。
たっぷりのパクチー上に香ばしいラム肉を
のせた人気メニュー「ヤンパク」は佐谷さん
が北京でハマった中国東北料理。
ちなみに同店で1週間に使うパクチーは
約10キロ!
画面左上がパクチー入りのベルギービール
「ヒューガルデン」。旅をイメージして
他にも世界各国のビールを揃えている。
フロアには洗面台を設置。
「お子さま連れで来店してほしいので、
食事の前には手を洗うという当たり前の行為
をできるようにするために用意しました」
(佐谷さん)。
仕事もプライベートも一緒の佐谷さん一家。
オーナー恭さんと、スリングだっこで息子
の慧くんと共に働く妻の美紀さん。
エスニック料理に頻繁に登場するハーブ、”パクチー”。個性的な味と香りを持つこのハーブは、好き嫌いがはっきりと分かれることでも有名だ。そんなパクチー料理の専門店となる「paxi house tokyo(パクチーハウス東京)」が07年11月、世田谷区経堂に登場し、話題を集めている。

日本人にとっては、特に東南アジアで使われるイメージがあるパクチーだが、実は地中海地域が発祥。世界150以上もの国々で愛用され、例えばメキシコではタコスに、モロッコやポルトガルではスープに使われる。すぐに思い当たらなくても、別名の"香菜(チャンツァイ/シェンツァイ)"、"コリアンダー"と聞けば、納得する人も多いだろう。同店は、そんなパクチーをメニュー全てに使用しており、パクチーを愛する人に惜しみなくパクチーを提供するだけでなく、嫌いな人でも食べやすいよう工夫されているのが特徴だ。

同店のオーナーである佐谷恭さんは、世界約50カ国を旅行してきたという生粋の旅好きだ。学生時代はもとより会社員時代にも休暇を利用して、07年以降は会社を退社して留学や旅を重ねてきた。そんな彼が飲食店を開くことになったきっかけは、旅を通して多くの人と出会い、飲み語った経験にあるという。

「そこには国籍や世代や立場を超え、皆が対等に存在できる心地良い空間がありました。そんな"非日常"の旅行体験を、生活の中でも”日常”にしたいと考えてきたんです。もともといろんな人を集めて飲むのが大好きで、人と人とをつなぐネットワークを作るのが得意。それなら自分で人が交流できる飲食店を作ろうと考えました」(佐谷さん)

そもそも、佐谷さんがパクチーに注目したのは05年。たまたま大量のパクチーが手に入ることになり、仲間を集めて”パクチーを食べる会”を開催した。その際に、パクチーに対する人々の過剰なまでの反応に驚いたという。

「皆の好き嫌いがはっきりと分かれて、その時にここまで反応が極端で面白い食材はないと気付いたんです」(佐谷さん)

その後、佐谷さんはパクチー好きが集まるコミュニティ「日本パクチー狂会」を結成。本来パクチーはタイ語で「phakchi」と表記するが、ラテン語で平和を意味する"pax"と人の象形文字"i"を使い、"paxi"と表記することにしたという。

「旅先や外国料理店で初めて出会うパクチーは、食を通した異文化理解、平和の象徴。だから店を開く時にも、自然とパクチーを主役にしたいと考えました。旅とは、世界に積極的に働きかけること、人と人との相互理解や平和を深めるものだと思います」。

そう語る佐谷さんは、同店を運営する「株式会社旅と平和」の代表でもある。07年8月9日(パクチーの日)に設立したという同社は、国際協力や環境、子育て分野などで活動するNGOやNPOの事業支援のほか、人と人の交流を深める仕掛けの発信などを目指し設立したもの。「パクチーハウス東京」は、同社の初事業であり、基盤となるプロジェクトとしてスタートしたのだそうだ。

白木を使った26坪の店内は、そっけないほどシンプルで開放的な空間。自分たちで珪藻土やペンキを塗ったという壁面はギャラリーとして開放しており、常時絵画や写真の展示が行われる。

「お客さまとコミュニケーションをとろうと考えると30人が限界。通常なら50席作れる空間を28席に抑えました。また、隣に居合わせたお客さま同士で交流してほしいと考え、空間としてのゆとりはありますが、客席同士はあえて近い造りにしています」(佐谷さん)。

メニューは、旅友達であり前職はカメラマンというシェフ、山下宏史さんと共に考案。和食をベースに、旅先で出会い美味しいと思った料理をイメージしながら開発した。例えば「パクチーが香る季節野菜のピクルス」(450円)や「ぐちゃぐちゃが美味しい皮蛋豆腐」(M 600円/L 890円)のほか、鶏のスープで炊いた「パクライス」(650円)、パクチーのアイスクリーム「自家製パク塩アイス 甘パクソース」(400円)など、無国籍でユニークな料理が並ぶ。同店で使うパクチーは1週間になんと約10キロだとか。また、ビールは世界各地の銘柄を常時13種、時々によりプラス5種類程度を用意。あまり知られていないが、有名なベルギーのビール「ヒューガルデン」には、実はパクチーが入っているのだとか。

出店場所に都心から少し離れた世田谷区・経堂を選んだ理由については、
「地域とのコミュニケーションを大切にしたいという思いがあったので、自宅がある世田谷区内で物件を探していましたが、あえてわざわざ足を運んでもらうような場所を選びました。現在、来店される方は初めて経堂駅で降りたという人が約半数。遠くは、愛媛や福岡からいらっしゃった方もいます」(佐谷さん)。

客層は20〜30代が中心で、男女比は4:6程度。「パクチー専門店」という耳慣れない飲食店の出現は、口コミやネットであっという間に噂を呼び、雑誌等のメディア取材も頻繁に受けているという。同店HPへの訪問者数は1日1,000人近くにも及び、Googleで「パクチー」を検索すると40万ページ以上がヒットするなか、同店HPはなんと上から4番目という上位をマーク。結果、3月以降は予約だけで連日満員御礼というからその盛況ぶりに驚く。

「好きでも嫌いでも、ブログに書き込んで下さったり友達に口コミして下さったり、パクチーというキーワードに多くの人が反応し、繋がったことが何よりの成功ですね。今後は様々なイベントや交流会を開催していく予定。いろんな人と交流できる、常に面白い空間にしていきたいです」(佐谷さん)。

おいしい食事やくつろげる空間など、飲食店としての魅力が伴ってこその結果といえるが、同店が成功した第一の要因は、"パクチー"という反応の高いキーワードに着目した点に尽きる。

インターネットが最も手軽な情報の発信・収集ツールとして企業はもとより個人レベルでも必須となった今、インターネットでの広がりを意識したより明確でキャッチーなキーワードの打ち出しが、より重要になってくるだろう。


[取材・文/渡辺満樹子(フリーライター/エディター)+『ACROSS』編集部]


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