Rolling Stone CAFE(ローリングストーンカフェ)

Rolling Stone CAFE(ローリングストーンカフェ)

レポート
2008.02.19
フード|FOOD

“大人のたまり場”を目指して。六本木に誕生した大規模ダイナー

壁には歴代の『Rolling Stone』誌の
表紙が展示されている。
100%ビーフハンバーガー(1,200円〜)。
同店ならではの豪快なアメリカンフードを
提供する。
併設のステージで随時ライブ等も行って
いく予定だという。
場所は「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI」の
斜向かいという好立地。テラスには
六本木ヒルズなどゴージャスな都心の
夜景が広がる。
(株)シンクロ二シティ代表取締役会長の
角章さん。
米ドラマ『ツイン・ピークス』がモチーフ
となった制服は計3パターン。
アクセス至便な六本木・けやき坂下という立地に、米国ポップカルチャー誌『Rolling Stone(ローリングストーン)』の名を冠する「Rolling Stone CAFE(ローリングストーンカフェ)」が07年12月3日オープンした。運営するのは、(株)シンクロ二シティ。同社の代表取締役会長である角章さんは、バブル期の有名ディスコ「芝浦ゴールド」や「エムザ有明」のアートディレクションを手がけ、その後は西麻布界隈で話題の飲食店を数多く手がけた空間プロデューサーである。同社は、07年3月オープンの東京ミッドタウンに「SALON BAR YOL(サロンバー ヨル)」を出店しており、それに引き続いての六本木エリアへの出店となる。

「昔はふらっと行っても、友人がいたり、年齢に関係なくお客さんと仲良くなれる行きつけの店がありました。でも今はそういう“たまり場”のような店が少ない。昔を懐かしんで、というわけではなく、現代人なりのお酒を介したコミュニケーションが生まれる“大人のたまり場”がほしかったんです」(角さん)。

という角さんの想いを受け、コンセプトデザインを担当したのが辻堂海岸の「スプートニク・ビーチ」などを主催したTRIPSTERの野村訓市さん。野村さんが掲げた“70年代のラスヴェガスを髣髴とさせるロックな空間”というコンセプトに合致する『Rolling Stone(ローリングストーン)』誌にアプローチした結果、日本で同誌を出版する(株)インターナショナル・ラグジュアリー・メディアの協力を得て、世界初とな「Rolling Stone CAFE(ローリングストーンカフェ)」の出店が実現。“大人が羽目をはずして楽しめる”ダイナーが誕生したというわけだ。

同店は、テラススペースを含め約140坪。店内70席、テラス60席という大箱だ。ともすればファミリーレストランのようにもなりかねない規模だが、一歩店内に足を踏み入れるとそこには純然たるアメリカンダイナーが広がる。まずエントランスをくぐるとウェイティングスペースとしても機能するキャッシュオンタイプの70年代風バーカウンター、奥にはオーセンティックなボックスのソファ席と、ダンスホールを思わせる空間にテーブル席が並ぶ。かなり照明を落としているが、圧迫感や不健康さがないのは、どの空間も六本木の夜景に広がるテラスに面し、出入り可能という自由さがあるからだろう。

「一時のデザイナーズブームを越え、雰囲気やインテリアがかっこいい店というのが当たり前の今、飲食店の空間デザインはたいへん難しい時代に突入しています。この店では落ち着いた空間を重視したデザインはもとより、集まってくるお客さんが持ち寄るパワーを吸収できるような店を目指したかったんです。そのために“やんちゃでプロフェッショナル”な外部スタッフの協力を得ました」(角さん)。

プロデューサーには角さんの20数年来の友人であり、80〜90年代に「芝浦ゴールド」や恵比寿「MILK」、現在は新丸ビルの「来夢来人(ライムライト)」「mus mus(ムスムス)」など人気飲食店を展開する(株)エラ・インターナショナルの代表取締役・佐藤俊博さんを指名。佐藤さんとともにそれらを手がけた塩井るりさんもアシスタントプロデューサーとして参画する。140坪の大箱を腰を据えてお酒を楽しめる“大人のたまり場”へと昇華させたのが、アパレルブランド「UNDER COVER(アンダーカバー)」等の店舗内装を手がける「M&M(エムアンドエム)」。デジタル色を排し、時が経つごとに味が生まれるウッディでアナログなインテリアで統一することで、ノスタルジーを喚起させる和みの空間となっている。ウェトレス・ウェイターのユニフォームは、「WTAPS(ダブルタップス)」が担当。米ドラマ『ツイン・ピークス』に登場するウィエトレスの衣装がモチーフになっているのだそうだ。

フードメニューは、アメリカンテイストを加味した豪快なアメリカンフードを中心に構成している。特に力を入れているのが、100%ビーフハンバーガー(1,200円〜)。この道一筋“バーガーマン”と呼ばれるコックにより、バンズひとつにまでこだわったハンバーガーを提供する。また、アルコール類も充実しており、特にテキーラは最高級のテキーラと称される「パトロン」をはじめ、常時20種類以上が楽しめる。さらにマルガリータなどのフローズン系カクテルはピッチャーでの提供を予定しており、意外性のあるサーブ方法も話題を呼びそうだ。意外なことに、ケーキなどのスウィーツ類は予想以上に男性客にも好評だという。

実は、若い頃から六本木界隈を遊び場にしていた角さんではあるが、曰く“歌舞伎町化”していったという理由から、しばらく足が遠のいていたという。しかし今また六本木に回帰した理由には、近年「六本木ヒルズ」や「東京ミッドタウン」をはじめとする話題の施設が続々とオープンしたことで、六本木がまた“大人が楽しめる場所”として集客力を持ったことが背景にあるという。

「六本木は世代や国籍関係なく様々な人が集まる場所です。この店を“たまり場”にして、ふだん接点のない人同士がコミュニケーションを深められる場を目指します」(角さん)。

たまり場のような飲食店は、意外に難しい。大箱ではたまり場としての居心地に欠けるし、小規模店舗だと一見に対して排他的なムードが漂う場合もある。しかし同店は店としてのオリジナリティと居心地を保ちながら、仲間なら仲間で、一人で飲みたいときには一人で、とある意味ファミレス的に使える自由さがある。それは複数の世代や多人種が集まる六本木にこそ望まれていた店だといえるだろう。90年代の“バブル期”と“裏原カルチャー”の立役者ともいうべき世代を超えた“やんちゃな大人”たちがつくりあげた同店が、今後どんな大人を育てる場になるのか、注目が集まる。

[取材・文/津島 千佳(フリーライター/エディター)+『ACROSS』編集部]

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