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MUSIC

「perfume(パフューム)」

[2008/02/05]

「perfume(パフューム)」 「perfume(パフューム)」にみるアイドル文化のターニングポイント

 「perfume(パフューム)」の人気もここへ来てホンモノになった感がある。宇田丸(ライムスター)、吉田豪(コラムニスト)あたりから「perfumeが面白い」というメッセージが発信され、メジャーデビューの2005年あたりからメディアで目にするようになった。一部の熱烈な支持を集めていたもののセールスには結びつかない状況が続いていたが、2007年春に木村カエラが自らの番組でプッシュしたあたりが大きなターニングポイントとなり、人気が本格化。8月にはアイドルとして初めてサマーソニックに出演。NHK−AC公共広告機構のキャンペーンCMに起用された5枚目のシングル「ポリリズム」が9月に発売されると、これがオリコンウイークリーチャート7位のヒットとなった。

 2006年に発売されていたベスト盤にして初のフルアルバム「コンプリート・ベスト」は息の長い、長く売れ続ける作品となり、アイドルものとしてはむしろイレギュラーな売れ方をしている。11月に開催されたツアー、大晦日のカウントダウンライブはチケットの争奪戦となり、かなりのプレミアがつくような事態となった。

 「Perfume」の面白さは、いわゆるアイドルのカテゴリーに入る女子3人のヴォーカルユニットながら、クラブで流れていても違和感のないテクノ/ポップスとしてクォリティの高い楽曲とアクターズスクール仕込みの本格的なダンスの実力、そして天然素朴な地のキャラクターが絶妙なバランスで成立している点にある。並の国産ポップスを凌駕するサウンド・プロダクションと、広島弁丸出しの天然発言を連発する3人のキャラクター。その絶妙なバランスが多幸感をファンにもたらすのだ。

 メジャーデビュー以降、彼女たちの楽曲を手がけているのは自ら“capsule(カプセル)”のユニット名で活躍する中田ヤスタカ。ピチカート・ファイヴ/渋谷系の流れを汲むサウンドで評価の高いプロデューサー/作曲家/DJだ。ニコニコ動画やyoutubeに動画がアップされているので関心のある方はご確認いただきたいのだが、perfumeの楽曲では声にかなり強くエフェクトがかかっており、肉声はあまり原型を留めていない。これはタレントのパーソナリティが表現のど真ん中にあるべきアイドルポップスというジャンルにあっては禁じ手とも言える手法だ。

 また、楽曲のプロモーションビデオもアートディレクターの関和亮が継続して担当し、一貫してテクノ〜近未来的なイメージのビジュアルイメージを継続している。素材はアイドルながら並のJ-POPアーティストよりもはるかにクリエイティビティへのこだわりが施されている。

 一気にブレイクしてきた新しいテイストのアイドルユニットのような印象を与えるかもしれないが、実は決して平坦な道のりではなかったという。元々perfumeは広島の地方限定アイドルからキャリアをスタートさせた後、メジャーデビュー後は秋葉原を拠点に活動。マイナーアイドルのプロモーションの常として、握手会やファンとのバスツアーなどが催されていた。2006年までは実際、イベントのチラシをメンバー自らがスタッフとともに街頭で手配りしていたのである。

 総決算としてのシングル集ベスト盤が出た時点で活動休止の危惧すらあったという。宇田丸や掟ポルシェといった業界内の支持層は、クラブで展開していたイベント「申し訳ナイト」を通じてアイドルファン以外の層にサブカル文脈でPerfumeの魅力を地道にプッシュしていた。筆者もこの段階でperfumeを認知したので実感として判るのだが、こうした動きがやがてニコニコ動画やyoutube、mixiといったデジタルメディアを通してじわじわと広がっていったことがブレイクの下地を作っているのだと思うのだ。

 結果として、現在でもperfumeのコンサートやイベント会場には、コアなアイドルファン、クラブ系音楽ファン、木村カエラを入り口としてきた同世代以下の女子ファン、サブカル好きの30代男女など多様なオーディエンスが集まっているのだ。

 「僕の感覚としてはperfumeを売ろうとしている人たちよりも、ユーザーの方が先を行ってますよね。Perfumeに策略や決め事が「ある」と、想像して楽しんでる。作り手はおそらくリスナーとは別のことを考えていて、特にperfumeの場合は、事務所やレコード会社もそれぞれ考えが違うと思う」(中田ヤスタカ『クイック・ジャパン』74号より)。
 
 アイドルを売ることに経験値の少ないアミューズであればこそ、perfumeの3人が持つ素材のよさがそのまま生かされたのではないかと指摘する声は多い。思えば、沢尻エリカや中川翔子もいわゆるアイドルとしては本流になれなかった人たちだ。アイドルとしての姿の向こう側にあるリアルを活かしながら、クォリティの高い作品を提供する、という真っ当なことが成立しづらいアイドルマーケットへの閉塞感は既にユーザーの中に満ちている。

 であればこそ、どこへ行くのか作り手すら判らない、というperfumeの美しい偶然が、旧い予定調和では決して得られないカタルシスをファンにもたらしたのである。


[取材・文/本橋康治(フリーライター)]


PerfumeのCD & DVD


関連作品


<追記>

 2000年代初頭に圧倒的な支持を集めたアップフロント・エージェンシーのモーニング娘。や松浦亜弥といったアイドルにも新しさを感じさせる動きはあった。松浦亜弥には小西康陽プロデュースによる楽曲提供といったトライアルも行われていたし、モーニング娘。の集団内での力関係を見ながら、ファンはアイドルたちのリアルを見ようとそれぞれの文脈を見つけていた。

 しかしいずれもどこか場当り的なプロデュースという感は否めず、芸能界の中にいつしか埋没してしまう結果となった。相次ぐスキャンダルへの対応が後手に回ってしまった数々の事例が記憶に新しいが、ウェブ上への情報流出のスピードにアイドルを管理する方が追いつかなくなってしまった点も大きい。作り上げたアイドル像がひとたび綻べば、それを再び作り上げるのは容易なことではない。

 「いまは昔ながらのアイドルの形が成り立ちづらくなってきてるけど、例えば沢尻なり、しょこたんなりみたいに、そのまんまの資質を生かして、本人的には無理なくブレイクして、なおかつみんなもそこを支持してるみたいなアイドルの形が普通に成立しつつあるんだよね」

 「perfumeだって、もちろん曲がいいのは大前提だけど、事務所の抑圧とかがないからこその天然暴走発言が活きてて、そのキャラがアイドルとして支持されてるわけだから」(BUBUKA2007年11月号「アイドルを救え!」での宇田丸発言より)



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